2009年11月13日

誰にでもわかる資本主義の定義

make capitalism history.jpg資本主義とは何か? 平凡社の『世界大百科事典』には、次のようにわかりやすく書いてある。

「資本主義とは利潤の獲得を第一の目的とした経済活動のことをいう。」

「貨幣が元手として投下され、もうけ(利潤)とともに回収されたとき、貨幣は利潤を生み出す資本として用いられたことになる。」

「資本主義経済においては、生産活動も生産の必要そのもののためになされるのではなく、利潤の獲得のためになされる。」

「利潤の獲得はさまざまの機会をねらって行われる。ある品物を安く買ってきて別のところで高く売ることによって、また、なにか品物を作ってそれにもうけをつけて売ることによって、さらには貨幣を人に貸しつけて利息をとることによっても、利潤は獲得される。」


つまり、例えば資本家がシャンプーを売る時、「10人いるから3本くらいあれば足りるだろう」ということは問題ではない。問題は「1本につき10円のもうけがあるから、3本なら30円のもうけだが、ひとりに1本ずつ売れば100円のもうけ、ひとりに2本ずつ売れば200円のもうけになる。なんとか2本ずつ売れないものか?」といったことなのだ(註1)。
それはシャンプーという品物でなくても、服でも自動車でも缶ジュースでも、何でもいいし、また製造業でなくてもいい。「こっちで買ってあっちで売れば一個につき10円のもうけになるから、10個売って100円のもうけにしたい」といった商業でも(註2)、「5%の利率で100円貸せば5円のもうけになるから、10人に1000円ずつ貸して500円もうけたい」といった金融業でも何でもいいのだ。

今、実際にこれらは一体化してしまっている。


もうけを大きくする方法は大量に売りつけることばかりではない。元手に使うカネ(コスト)をもっと安く済ませることでも、もうけは大きくなる。こうして、労働者の人件費は削られ、原材料が安く買い叩かれるのだ(註3)。

もうけを増やすために資本家は、より安い資源や労働力、たくさんの購買者やカネを借りる人(投資先)を求めて、世界を隅々まであさり続けている。

こんな視点で経済活動を続けられたら、モノとゴミは無限に増えつづけ、貿易は無限に拡大し、世界の負債も無限に増えていく(実際には無限になんて不可能なのだが)。
こうして環境破壊とエネルギーの浪費と格差が世界中で広がる。
我々にも資本家の仕事を手伝ってもうけをわけてもらうことしか、生きるすべがなくなってくる。

問題の中心はこのグローバルな資本主義なのだ、ということは確認しておきたい。


(註1)我々が豊かさを追求したために、モノの溢れた社会になったかのように言われるが、単に売る側のもうけ追及の結果にすぎないのかもしれない。
(註2)株や通貨を、安い時に買って高い時に売るのも同じこと。

(註3)金融の場合も、より安い利率で借り入れたカネを貸し出せば、もうけは大きくなる。金利ゼロで資金を集められるなんて、銀行にとっては願ってもないことであるはずだ。

図の”make capitalism history”とは「資本主義を終わらせろ」の意味で、今のグローバル資本主義に反対するムーブメントにおける重要なスローガン。

posted by 鶴見済 at 16:45| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2009年11月07日

我々はアジアにゴミを輸出している

中国・貴嶼でのケーブル処理.jpg廃品回収車が無料で引き取った製品の多くが、アジア諸国へ輸出されると見られているとは知らなかった(註1)。

日本ではペットボトルも、500ミリリットルの容器(約30グラム)にして年間200億本分(!)も作られているが、廃ペットボトルの半分近くが中国へと輸出されているのも知らなかった(註2)。

我々が新商品を見たり作ったりするのと同じ熱心さで、ゴミのことも見ていれば、大量生産・大量消費を肯定するなんてことにはならないはずなのだ。


例えば、中国の香港に近い沿海部に貴嶼(グイユ)という町がある。

ここは世界最大の電子電気ゴミ(E‐waste)の処分場になっていて、手作業でテレビやパソコンや携帯電話が分解され、カネ目の金属や部品が取り出されて、残骸は野焼き・野積みされることも多い。環境と健康への害は深刻で、検査を受けたここの子どもの8割以上が鉛中毒になっていた。


貴嶼でのキーボードの処理.jpgさらに日本ではほとんど知られていないが、日本はフィリピンなどの東南アジア諸国とEPA(経済協力協定)を結んで、有害ゴミの輸出関税を削減・撤廃しようとして、各地で猛烈な反対運動を巻き起こしている(註3)。

つまり、アジア諸国から資源や製品を輸入し、ゴミを送り返すというとんでもないことをやっているのだ、この国は(日本とアジア諸国の関係は、世界の「北」と「南」の関係に置きかえてもいいかもしれない)。

それなのに地デジ移行で最大6400万台のテレビが捨てられることを(註4)、国も経済界も奨励しているのだ。文句を言わないほうがどうかしている。

もちろんリサイクルも大事だが、もっと根本的な解決策は、こういう自分たちの儲けのために大量に作っては売り込んでいる側を止めることだ!

──とかいう記事を、今出ている『オルタ』9・10月号に書いた。

『オルタ』09年9・10月号 「もうたくさんだ!vol8 ゴミはどこへ行くか?」
http://www.parc-jp.org/alter/2009/alter_2009_09-10.html



貴嶼での電子基盤処理.jpg日本(あるいは「北」の国々)に住む我々には、「大量生産 ⇒ 大量消費」としか見えないプロセスも、本当は「(資源の)大量採取 ⇒ 大量生産 ⇒ 大量消費 ⇒ (ゴミの)大量廃棄」という一連の流れなのだ。

この流れも始まりと終わりを見れば、ちゃんと自然界に含まれていることがわかる(我々の身のまわりにある人工物も、すべて元は自然界から採ってきたもので、かつ簡単に自然界には還らない)。そのことがわかっていれば、こんなことはいつまでも続けられないのは明らかだ(註5)。
またこの始まりと終わりは、「南」の国々に押しつけられることが多く、そこで環境破壊や健康被害や搾取が起きているが、それも同時に見えなくなっている(最近では「大量生産」の過程までもが「南」の国々に輸出されて、我々に見えているのは「大量販売 ⇒ 大量消費」のみになりつつあるとも言える)。

そして、これを推し進めているのが「グローバリゼーション」というやつだ。

 

貴嶼での携帯電話の処理.jpgちなみに、中古品のやり取りは生産活動を伴わないことになっているので、GDPには算入されない。けれども、それをすべて壊し、膨大なエネルギーを使ってリサイクルすれば、GDPに算入され経済は成長する(註6)。
これを見ただけでも、「GDPの増加や経済成長がいい」だなんて言えないことは明らかだ。まずはこの“神話”をなんとかすることだ。


(註1)廃家電、アジアむしばむ(朝日)

http://www.asahi.com/eco/wars/TKY200810200318.html

(註2)中国に流れる廃ペットボトル 日本のリサイクル危機に(産経)

http://sankei.jp.msn.com/life/environment/080824/env0808242037000-n1.htm

(註3)本当に一番押し付けたいのは、“放射性廃棄物”だろうと思う。

(註4)地デジ移行で最大6400万台のアナログテレビが処分―JEITAが予測(ただしこの団体は電子工業の業界団体)

http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20344923,00.htm

(註5)参考:『現代社会の理論』(見田宗介、岩波新書、1996)

(註6)メーカーは新品が売れなくなるので、中古市場が発達して商品のライフサイクルが伸びることに不快感を示している。

参考映像:「中国、インドでのe-waste解体労働者の現状」(グリーンピース・チャイナ作。ページの下のほうにある。英語だが映像だけでも見ごたえがある)

http://www.greenpeace.or.jp/campaign/toxics/zerowaste/1/ewaste1_html

写真はすべて中国・貴嶼のもの。上から順に、ケーブル、キーボード、電子基盤、携帯電話が手作業で処分されている。

posted by 鶴見済 at 17:44| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2009年10月20日

2%の人々が世界の富の半分を独占している

世界の所得の配分.gif国連大学の調査で以下のことがわかった(註1)。

●世界の家計資産の半分以上は、最も裕福なわずか2%の人々が独占している。
●同じく、1%の人々が40%の資産を独占している(2000年)。

●貧しい半分の人々が所有する資産は、世界の家計資産の1%にすぎない。
高所得国でも純資産がマイナス(負債)で、世界の最貧困層にランクされている人が数多くいる。

日本が世界で見たら裕福な国であるとは言っても、
厚生労働省の調査では、日本の貧困率は15.7%、つまり6〜7人に一人が貧困という、98年以降最悪の数字だった。こんな貧困率の高さはOECD加盟国のなかでは、メキシコ、トルコ、アメリカに次いで第4位なのだ(註2)。


最富裕層1%の国別割合.gif普通に異常事態だと思う。こういう状況をそのままにしておいて、この世界で起きている「カネがない」とか「仕事が大変だ」といった問題をどうにかしようとしても、結局どうにもならないんじゃないか?

「無意味でも、これをやらないと皆が食っていけない」なんて言いながら、無駄な新製品やダムを作ってさらなるカネを稼ごうとするより、今ある富をより公平に分配するほうが先じゃないのか?

そして半分以上の富を独占されている98%の我々が、この一人が平等に一票を持っている民主主義の世界で、なぜこんな状況に甘んじているのかも知りたいところだ(富裕層による何らかのギミックが使われてるはずだ)(註3)。


(註1)最も裕福な2%が世界の富の半分を所有(国連大学、2006年)

http://www.unu.edu/HQ/japanese/news/news2006/mrj44-06.pdf
(註2)貧困率:日本15.7% 先進国で際立つ高水準(毎日)(ただしここで言っているのは、あくまでも「相対的貧困率」のことだが)

http://mainichi.jp/life/money/news/20091020k0000e040071000c.html
(註3)日本でもアメリカでもイギリスでも、70年代後半以降、富裕層への減税が進んだ。日本では83年まで75%だった所得税の最高税率が、08年には40%まで下がっている。多数決の社会でなぜこんなことが起きるのか?

参考:09年世界の億万長者トップ20(AFP通信)(1位はマイクロソフトの社長.だが、11以下に並ぶウォルマート社一家4人の合計資産はそれをはるかに上回っている)

http://www.afpbb.com/article/economy/2580956/3906177

フォーブス長者番付・億万長者ランキング(日本の富豪40人)2009年(1位はユニクロの社長)

http://memorva.jp/ranking/forbes/200902_japan_richest40.php

図上は、「シャンパングラス」と呼ばれる所得の配分の偏りを示す図(2割の人が8割以上の富を独占している。92年)。下は、世界の最富裕層1%の人々の国別の割合(国連大学)。

posted by 鶴見済 at 23:50| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2009年10月11日

電通の広告戦略を分析する

ソフトバンク 09年夏モデル19種.png「買うことだ。どんなものでも」――アイゼンハワー元米大統領(1957年の大恐慌以来の不況時に、景気回復のため国民は何をするべきか、と聞かれて)


70年代の初めに某大手広告代理店(電通と言われている)によって謳われた、以下の「広告戦略十訓」(註1)が我々を戦慄させるのは、まるでアイゼンハワーの景気対策のように、それが今も変わらずに生きているからだ。


1.もっと使わせろ 2.捨てさせろ 3.無駄使いさせろ 4.季節を忘れさせろ(註2) 5.贈り物をさせろ(註3) 6.組み合わせで買わせろ 7.きっかけを投じろ 8.流行遅れにさせろ 9.気安く買わせろ 10.混乱をつくり出せ


これらの元になったとされる、アメリカの社会学者V・パッカードがまとめた「浪費をつくり出す戦略」(註4)もあわせて読むと、よりわかりやすい。こちらは50年代のアメリカで使われた販売戦略をまとめたもので、ここではその7つの枠組みに自分なりの解説や今風の事例も含めた(註5)。


1.もっと買わせる戦略

 共有から、一部屋にひとつ、一人にひとつ、さらには一人に複数へ(註6)。例:男性用・女性用別の整髪剤、朝にもシャンプー。

2.捨てさせる戦略

 使い捨て化して、使うたびに買わせる。例:紙製の食器、使い捨て容器、使い捨て傘、使い捨てカメラ、使い捨てコンタクトレンズ、使い捨てカートリッジ……。

3.計画的廃物(陳腐)化の戦略 

 a)物理的陳腐化 丈夫・頑丈には作らない。

 b)機能的陳腐化 今持っているものは機能的に劣っていると感じさせる(実際には、新製品に余計な機能が増えているだけにすぎなくても)。

 c)心理的陳腐化 最も重要。今持っているものが流行遅れだと感じさせる。例:年に何度も発表される携帯電話のニューモデル。

使い捨てデジタルカメラ.jpg4.混乱をつくり出す戦略

 価値の判断を鈍らせる。例:「3個で○○円」、無料サービス品の添付、通話料金の割引制度。

5.月賦販売による戦略

 クレジットと分割払いで、現金がなくても、今買えるように。

6.快楽主義を植えつける戦略

 a)浪費の正当化──「消費は美徳」という価値観の植えつけ。

 b)浪費の口実を与える──本日限り、期間限定価格、記念日などの活用。例:「イースターは新しい靴で」「バレンタインデーには男性からもチョコを」。

 c)便利さの提供──すぐに作れる、すぐに使える、すぐに届けられる(気安く買わせる)。例:ファストフード、ネット販売。

7.人口増加を利用する戦略

 大勢の人は単に大きな市場と見なす(若者・子ども市場には“将来の顧客”も含まれているので特に大事)。例:団塊ジュニアへのマーケティング、中国・インドへの進出など。

細かくやっていると切りがないので、あとはパッカードの本を図書館で読むなどして、自分で今風の事例を探してみてほしい(この本は今でも身に覚えのある事例で溢れかえっているが)。こんな戦略の宝庫である家電用品店、コンビニ、ドラッグストア、服屋、レコード屋、スーパー、デパート等々もこういう視点で見て回れば、楽しめる場所になるかもしれない。

では、これらの戦略によってムダになっているものは何か? もちろん資源もエネルギーもムダになっているが、一番取り返しがつかないのは、これら全てに費やされている「我々の労働」なんじゃないか。

買わされている側はもちろん、買わせている側も反乱を起こすべきだ。「こんなくだらないこと、やってられるか!」と。


(註1)参考:『日本のゴミ』(佐野眞一、ちくま文庫、1997)他
(註2)スーパーの食料品売場は、いつが旬なのかわからなくなった果物や野菜で溢れている。

(註3)ただし、商売に乗せられているのでなければ、贈り物自体は悪いことではない。
(註4)参考:V.パッカード『浪費をつくり出す人びと』ダイヤモンド社(原著:The Waste Makers 1960, “waste”は「浪費」だけでなく「ゴミ」の意味でもあることは重要)

(註5)『ごみ問題の総合的理解のために』(松藤敏彦、技報堂出版、2007)という本によるまとめも参考にした。

(註6)50年代のアメリカでは、すべての家庭用品の売上げ倍増を狙って、「一家族にふたつの家を」という宣伝までもが行なわれた(!)。「共有すること」は、こういう戦略に対する強烈な反対行動なのだ。

図上は、ソフトバンクが発売した19種類の09年夏モデル携帯電話。下はついに発売された使い捨てデジタルカメラ、その名も「ECO digi MODE(エコデジモード)」(どういうエコなんだ!) 

参考:「使い切りデジカメ」先行販売

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0808/13/news031.html

関連日記:テレビのアナログ放送終了に反対する

http://tsurumitext.seesaa.net/article/40379344.html

posted by 鶴見済 at 22:17| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2009年09月22日

反ナイキと反原発のデモ情報

反ナイキ カルチャー・ジャミング.jpg@宮下公園反ナイキ化デモ
9月27日(日)13時から 代々木公園A地区渋谷門集合反ナイキ 2.jpg(集合場所には、ついに宮下公園が使えなくなってしまった。)
詳細は「みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会」HP 

http://minnanokouenn.blogspot.com/


no nukes.png
A脱原発パレード

10月3日(土) 15時30分、千駄ヶ谷・明治公園出発
NO NUKES FESTA 2009 の一部としてhttp://www.nonukesfesta2009.com/

同じHPには今山口県・祝島で行なわれている、原発建設反対行動の緊迫した様子が伝えられている。

http://nonukesfesta2009.sblo.jp/article/32210060.html


多国籍企業による共有地の収奪(@)や、経済界の利益のための環境破壊(A)に反対の人や、もう部屋にいるのに飽きた人など、タダなので、ぜひ。

これまで社会的無力感みたいなものを散々感じてきて、今でももちろんそれはあるけれども、同じ文句のある連中が集まって文句を言うデモには、それとは正反対の何かがある。ような気がする。

原発関連日記:
原子力はクリーンなエネルギーではない
http://tsurumitext.seesaa.net/article/51241790.html
仕事を選べないという問題
http://tsurumitext.seesaa.net/article/64935710.html

posted by 鶴見済 at 14:55| 日記 | 更新情報をチェックする

2009年09月05日

服を買わせる戦略

アラル海 1989-2008.jpg「モードは死ななければならないし、ビジネスのためには早く死ぬほうがいい」──ココ・シャネル


日本の服の自給率はわずか1割でしかない(註1)。なのに日本に住む我々は一人あたり年間10キロの服を買い、9キロをゴミとして出していて、その総重量は家電4品目(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機)の年間総廃棄量約60万トンの2倍近くもある。しかも、そのほとんどをリサイクルもせずに処分してしまい、古着まで輸入に頼っているありさまだ。

だというのに服を作っている業界では、流行の服を売り出す2年前から、年に2回も、流行の色や素材を決めていって、川下にいる一般人に最終的な流行の服が届く頃には、すでに2年先の流行色が決めれられている、なんてことを今でもやっている(註2)。
つまり彼らは「これが今の流行ですよ」と売り出している裏で、「次の流行」「次の次の流行」「その次の次の次の……」まで同時に作っているんであって、今の流行なんか半年くらいで廃れさせるつもりで、そういう流行り廃りのサイクルまで計画して動いてるのだ。この人をナメた態度こそが、“計画的陳腐化”の本質と言ってもいい。

1950年代のアメリカでは、こうした婦人服業界の手法を他の様々なジャンルのデザイナーが取り入れて、計画的陳腐化の技術を練り上げていったため、この手法はあらゆるジャンルに及んでしまっている(註3)。まったくバカバカしい。


オルタ 09年7-8月号.jpg先進国の人々がこんなことをやっているので、世界で第3位の綿花輸出国である中央アジアのウズベキスタンでは、綿花栽培用の灌漑のために世界で4番目に大きい湖だったアラル海が干上がって、今や消滅寸前となっている(註4)。これは20世紀最大の環境破壊として知られている。

このウズベキスタンとアラル海で起きていることも恐ろしいが、詳しいことは今発売されている『オルタ』を読んでほしい。今回はこういう話です。

『オルタ』 09年7-8月号 「もうたくさんだ!vol7 服と綿花とアラル海」
http://www.parc-jp.org/alter/2009/alter_2009_07-08.html

そしてこれも記事に書いたが、こういう話を知った時に大事なのは、いたずらに自己責任化しないことだと思う。国内の格差・貧困問題での自己責任論は否定されたけれども、エコ問題についてはまだまだ人々は自己責任論に陥りがちで、もう十分な努力をしているのに、もっともっと自分の生活を切り詰めなければいけない、と考えてる人は多い。

もちろんそれはいいことだけれども、その結果これらのことすべての「推進者(アクター)」「受益者」である大企業や、この経済の仕組みそのものに批判が向かわなくなるのは、それはそれでよくないのだ。


(註1)こうして身近なものの自給率を調べていると、食糧、金属、木材(18%)、石油(エネルギー)と、むしろ自給できていると言えるものなどほとんどないような気がしてくる(セメントだけは意外にも100%自給してたが)。

(註2)参考:流行色が決まるまで 日本ファッション協会 流行色情報センターHPより

http://www.jafca.org/trendcolor/process.php

(註3)自動車業界に、まるでファッション・ショーのような「モーター・ショー」という新作発表会があるのも、婦人服業界の影響だろう。

(註4)ウズベキスタンにもともと綿花のモノカルチャーを押しつけ、ずさんな灌漑設備を作ったのは旧ソ連だった。が、こうした綿花の単一栽培に伴う環境破壊や搾取的な労働などの問題は世界的に広く見られる。

参考映像:Green TV Japan 『消えたアラル海〜純白の黄金』

http://www.japangreen.tv/journal/#/000057
参考活動:「自分で縫う」という対抗的活動をするNU☆MAN@IRA

http://irregularrhythmasylum.blogspot.com/search/label/numan
上の写真は、89年と08年のアラル海

posted by 鶴見済 at 00:44| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2009年08月29日

宮下公園がなくなる

イルコモンズ作「ナイキ主義」(野外掲示板).bmpとうとう9月から来年4月まで、ナイキ・ジャパン社と渋谷区が宮下公フェンスを張り巡らせて、野宿者も追い出して、大改造工事を始める。フェンスが取られた時には、そこはもうスポーツ施設で埋まったナイキ・ランドになっているだろう。
ナイキは、発展途上国で貧困に苦しんでいる少女たちを救済するための「ナイキ基金」まで設立しているが(註1)、日本の野宿者については、社会的責任とやらを感じないのか?


着工直前の8月30日(日)と31日(月)の2日間、宮下公園ではサマーフェスティバルが盛大に開催される。
行ける人はぜひ。


(註1)ナイキ・ジャパンHPより http://www.nike.jp/nikebiz/responsibility/giving.html

そんなことをするよりも、労働者にもっと賃金を払えばいいと思うが。
(註2)フェスの詳細は「みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会」HPにて

http://minnanokouenn.blogspot.com/

フライヤー http://www.scribd.com/doc/18775982/

図はイルコモンズさん作の「ナイキ主義」(野外掲示板)

「イルコモンズのふた。」より http://illcomm.exblog.jp/

posted by 鶴見済 at 01:31| 日記 | 更新情報をチェックする

2009年08月21日

自由貿易という敵

シアトルでの反WTO.jpg「米国との間で、自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易、投資の自由化を進める」──民主党マニフェストより


民主党が“締結”するとか、やっぱり“促進”するとか宣言している日米FTA(Free Trade Agreement)に対して、日本の農民から猛烈な反対運動が巻き起こっている(註1)。

この協定が結ばれれば、アメリカからの農作物がますます入ってきて、日本の農家に一層の打撃を与え、さらに食糧自給率を押し下げるからだ。アメリカはコメや乳製品まで例外ではないと言っている。

一体どうして、こんなに輸入食品が嫌われ、自給率を上げようという動きが生じている今、その流れに逆行することをやろうとするのか?

答は、自動車などの工業製品をアメリカに安く輸出したいからだ。日米FTAを急いでいる主な理由は、韓国がアメリカとFTAを結んだので、アメリカへの輸出で韓国の自動車産業などの製造業よりもよりも日本が不利な立場に置かれるのが許せないからだそうだ(註2)。また自動車のためか!(註3)

もちろん自民党は、戦後こういう政策を進めて日本の農業をダメにしてきた張本人だし、今でもオーストラリアとのFTAを進めていて、同じく農民からの猛烈な反対を受けている。今、自由貿易にちゃんと反対できているのは、残念ながら社民党と共産党だけだ。

サパティスタ民族解放軍が94年に蜂起したのも、このFTA(北米自由貿易協定=NAFTA)に対してだった。メキシコ最貧州・チアパスでの先住民によるこの反乱は、今でも世界中から多くの支持を集めている。

FTAは二国間か数国間での自由貿易協定で、WTO(世界貿易機関、World Trade Organization)という自由貿易を推進するための世界機構を補完する制度だ(註4)。そのWTOの99年シアトルでの会議への7万人の抗議行動は、反グローバリゼーション運動を一気に表舞台に登場させた画期的なものだった。

そのくらい自由貿易は、世界中で反感を買っているのだ。

「海外に売れるものだけ作って、そのカネで食糧など必要なものを買えばいい」というWTO/自由貿易主義の理屈は、結局うまくいっていないし、そういう状態がいかに望ましくないかは、我々の感覚でもわかるはずだ。日本だって、第一次産業を捨てて工業製品作りに特化してきたんだから。

そうすることのデメリットは数え切れないくらいあるが(註5)、最大のデメリットは、「カネがないと生きていけない/カネさえあれば生きやすい」世の中が進むことなんじゃないかと思う。

「貧困は、金銭を持たないことにあるのではない。金銭を必要とする生活の形式の中で、金銭を持たないことにある。」(註6)


(註1)日米FTAは日本農業を崩壊させる 断固阻止緊急国民集会開く(農業協同組合新聞)

http://www.jacom.or.jp/news/2009/08/news090812-5659.php

(註2)参考:鈴木宣弘「日米FTA(自由貿易協定)をどう考える」 『しんぶん赤旗』09年8月11日
(註3)民主党の売りである高速道路の無料化なんて、自動車なんか買えないより貧しい人たちには何のメリットもない話だ。

(註4)ちなみにFTAによく似たWTOを補完するものとして、まったくややこしいが、EPA(経済連携協定 Economic Partnership Ageement)というのもある。FTAに人的交流や投資など一般の貿易以外の要素も加えたものとされる。

例えば去年締結された日本とフィリピンの間のEPA(JPEPA、ジェーペパ)では、貿易の自由化拡大に加えて、日本のゴミをフィリピンに輸出し、フィリピンからの看護師と介護師を受け入れるというとんでもない内容が盛り込まれ、フィリピンで批判が巻き起こった。それに反対するフィリピンのアクティビストも来日している。 
JPEPA info http://jpepainfo.wordpress.com/

(註5)例えば農業では国際市場での競争に勝つため、自給用作物を放棄した大規模な単一栽培や、大量の農薬や遺伝子組み換え品種の使用などが進む。そんなことをうまくやったヤツばかりが、世界中に進出して一人勝ちし、格差を拡大させることになる。輸送に使う莫大なエネルギーの浪費も問題。

(註6)見田宗介『現代社会の理論』(岩波新書)より

写真は99年のシアトルでWTOに反対する人たち

posted by 鶴見済 at 12:36| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2009年08月05日

路上のサード・サマー・オブ・ラヴ

remix 09年9月号.gif今出ている音楽誌『rimix』9月号のセカンド・サマー・オブ・ラヴ特集で、インタビューを受けいている。

80年代後半のセカンド・サマー・オブ・ラヴに端を発したレイヴ・ムーブメントが、いかに今の「サウンド・デモ」や「ディープ(というか浅くない)・エコロジー」や自律的空間を作る運動と関係しているか、さらには踊ることが今も変わらずに持っている意味などについて触れながら、今は踊りながら反対するのがいい、みたいな話をしている。
目次からは落ちてしまっているが、48〜50ページにサウンド・デモや宮下公園でのパーティーの写真とともに載っている。記事のタイトルは「路上のサード・サマー・オブ・ラヴ」。

この特集では、デリック・メイや808ステイトのグレアム・マッセイなどそうそうたる面々の、セカンド・サマー・オブ・ラヴ当時を振り返る貴重なインタビューやコラムが載っていて、極めて資料価値が高い。

『remix』09年9月号 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/remix/article_270_55.jsp
参考:歌う、踊る快感 
http://tsurumitext.seesaa.net/article/36486229.html

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2009年07月21日

アルミはどこから来るのか?

オルタ 09年5・6月号.jpg日本に住む我々は、一人につき5日に2本のアルミ缶を使い捨てている勘定になる(スチール缶はもっと多い)。けれどもそのアルミニウムは国内ではまったく産出しないので、すべてを輸入に頼っている。日本は世界最大のアルミ輸入国なのだ。アルミと同じくもっともよく使われる金属である鉄も銅も、自給率は0パーセントだ。

日本はオイルショック以降、アルミの精製まですべて海外にやらせるために、ODAと称してインドネシアやブラジルに巨大なダムと発電所と精製工場を作り、今も現地の人々と自然環境に多大な負担をかけながら輸入している。それが自販機に並ぶ、あの夥しいアルミ缶になっているのだ。

で、エコポイント(つまりカネ)をあげるから家電を買い替えろ、と?(註)

金属や石油といった地下資源が掘り出されて運ばれてくる過程まで考えれば、それらでできた工業製品の買い替え促進が環境にいいなんてことはありえない。

資源の自給が無理なら、なるべく使わないように、というよりも「作らせないように」するしかないのだ。

──というような記事を、今出ている『オルタ』09年5・6月号に書いた。

http://www.parc-jp.org/alter/2009/alter_2009_05-06.html

エコポイントは、結局は国が出すカネであり、それはもともと我々の税金だ。
これほど露骨な経済界のための政策の連発をやめさせるためにも、そこと対立できる政党(自分としては社民党あたり)に躍進してほしいと常々思っているが、どれだけ自民党が人気をなくしても、決してそういうことにはならないのがもどかしい。

ちなみに都議会議員選と今度の衆院選についての感想は、以前と変わらないこんな感じ。

http://tsurumitext.seesaa.net/article/49524673.html


(註)その目的のひとつに、地デジ普及を謳っている。それのどこがエコなのか聞きたい。
http://eco-points.jp/EP/whats/index.html
参考:ノーム・チョムスキーのインタビュー(の冒頭部分)

http://www1.gifu-u.ac.jp/~terasima/interview040102jew040322hate.htm

posted by 鶴見済 at 23:07| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする