スポーツ用品はクールなのか?

なぜ我々(特に男)は、スポーツをやるわけでもない人まで、日常的にバカ高いスポーツシューズやスポーツウェアを身につけることになってるんだろうか? もともと「日常的なスポーツシューズ」の火付け役になったのはナイキとリーボックだった。 ナイキは90年代には若者、特に貧困層の若者をターゲットにして、「クールなもの」というイメージ戦略でバスケットシューズの売り込みに成功、スポーツ用品メーカとしてだけでなくアパレル(服飾)企業としても世界一となったのだった。 またナイキはいち早く、自社の製造部門を切り捨てて、賃金が安くて済み、労働者の権利も十分に認められていない地域(特にアジアの国々)の工場を使うという戦略を打ち出したことでも知られる。 そして会社としては、膨大な広告費を注ぎ込んで自らのブランドの宣伝ばかりを行うようになり、「グローバル企業の見本」となったのだった。 しかし同じく90年代には、女性や子どもに違法で非人間的な搾取労働を強いていたこともわかったため、本国アメリカやアジアで大々的な抗議・不買運動が巻き起こり、世界各国で大きく報じられた(が、異常なナイキブームに湧く日本ではほとんど知られなかった)。 それ以降ナイキは、「企業の社会的責任(CSR)」に取り組む風を装いだしている。 こうして、「貧しい国」では自分が身につけるわけでもないスポーツウェアやシューズを安い賃金で人々が作り、「豊かな国」の若者がそれを高い金を払って買わされる、というシステムが出来上がっているのだ。 これ…

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原子力はクリーンなエネルギーではない

「原子力はクリーンなエネルギーではない」。こんな当たり前のことを、最近は本気で主張しなければいけないのか? 電力会社や政府は「原子力発電はCO2を出さないから、温暖化を進めないのでいい」なんて宣伝をしているようだが、地球環境のために原発を推進するなんてバカげた理屈がこの世に存在するのか? 原発は放射性廃棄物を出す。そのウランが核分裂した後の物質の集まり(いわゆる「死の灰」)は、その後数万年とも数百万年とも、あるいは半永久的とも言われる長きにわたって高レベルの放射線を出し続け、人体や環境に害を与え続ける。人類はこの放射性廃棄物という典型的な「負の遺産」をどうすればいいのか、今でもわかっていないのだ。 放射線を出すくらいなら、CO2を出したほうがまだマシだと言える。 だというのに、原発回帰は世界的な傾向で、アメリカやヨーロッパも、スリーマイル島やチェルノブイリの事故以来脱原発を進めていたのに、ここに来て中東への依存度やCO2の排出量を減らすために(!)、原発に回帰しようとしている。 (人類は20世紀に入って、原子力(核)エネルギーという新たなエネルギー源を見つけた。けれどもそれに伴って出る「放射能」をどうすればいいかわからなかった。──ということで原子力開発への結論は出たんだとばかり思っていたんだが。) さらにアジアでは中国やインドなど、経済成長を進めたい国はもちろん、これまで原発などもたなかった国々まで、新たに原発を作ろうとしている(実際に作るのは日本やアメリカやヨーロッパの企業…

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我々は霊長類である

ミカンを育てていると、自分が霊長類だったことを思い出したりする。 ミカンの実は、花のあとに小さくついて少しずつ大きくなり、ちょうど手のひらサイズになった時に色も緑から黄色に変わって、食べ頃になったことがわかる。 手でもぎ取って皮をむくと、なかの房が各々一口サイズに分かれていて実に食べやすい。まるでヒトが食べるためにできた食品みたいで不思議だ。 大体果物というのは、味つけをせずに生で食べてるのにうまいところからして不思議なんだが。 昔々、我々霊長類は、主に熱帯地方で樹上生活を送っていた。が、数百万年から数千万年前のどこかの時点で、遺伝子に変異が起きて、体内でビタミンC(アスコルビン酸)を合成する最終酵素を欠いてしまった(他の哺乳動物はほとんどすべて、ビタミンCを体内で合成できる)。 霊長類は、本来そこで絶滅するはずだった(そのくらい、ビタミンCは不可欠な栄養素なのだ)。 しかし幸いにも、熱帯林の樹上にはビタミンCを豊富に含む”果物”があったので、霊長類は生き延びることができたらしい(というより、果物を獲れなかった種はそこで滅びてしまったんだろう。だから哺乳類のなかで、今いる霊長類だけが、色を見分けられるのかもしれない)。 しかし、森林からさまよい出て文明生活を始めたヒトは、かんきつ類をはじめとする果物を栽培しなければならなくなった。 さらに時代を下ると都市化が進み、果物は大量栽培や大量輸送で補われるようになる。 しかし、ビタミンCは「新鮮さ」の指標みたいなもので、収穫し…

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