2010年10月29日

APECとTPPが日本の農村をぶち壊す

韓国反APEC2005.jpg宮下公園ではナイキ化工事が進められていて、まだまだ事態は由々しいが、APECTPPもまた由々しい。

11月に行われるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の最大の狙いは、アジア・太平洋地域の貿易と投資をもっとやりやすくすることだ。そして今話題のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、環太平洋地域のいくつかの国が、参加国間の関税をゼロにしようとする集まりで、アメリカが主導的立場にいる。菅直人はAPECの場でTPPへの参加表明をしたくてしょうがないのだが、農民や漁民の反対にあって足踏みしている。


では、もう貿易は十分すぎるほどやっているのに、なぜこんなものを必死になって進めようとするのか? 競争力のある大企業は海外に進出して、モノを売ったり安い労働力のある場所に工場を移したい。日本の自動車や機械産業、アメリカの穀物・食品産業などはその例だ。彼らが国に、もっと自由に世界を動き回れるようにしろと迫るのだ。

一方進出される側の産業、例えば日本の農業などは、壊滅的な打撃を受ける(註2)。


韓国反APECデモ.jpg強い者が勝つんだからいいじゃないか、と思う人がいるかもしれない。

けれども、こんな貿易自由化を戦後ずっと進めてきた日本で、何が起きたか? 食べものや木材がどんどん輸入品になって(現在木材の8割は輸入)、「農林水産業では食べていけない」と、地方ではその代わりの土木建設工事がやめられなくなった。さらには「地方では食べていけない」と、都市に人々が出ていき、限界集落と耕作放棄地が増えつづけている。一方、東京は今や世界一の人口を抱える都市になっているが、上京しても仕事がなくなった人は野宿者にならざるをえない(註3)。これと同じ現象は世界的に起きている(註4)。

こういう負の側面はなかったことにして、「黒船が来た」「開国だ」と、大企業を儲けさせるためにバカ騒ぎしているのだ。


11月13日(土)には、横浜のAPEC会場のすぐ側を通る反対のデモがある。 ⇒いらない!APEC

警察は、ありもしない「APEC粉砕を主張する過激派(!)」の幻に怯えて、空前の警戒態勢をしいている(註5)。「反グローバリズム」のテロリスト・過激派扱いも見過ごせない。


(註1)日本の農作物の平均関税は、すでにアジアで最低の12%にまで下がっている。工業化が進んでいる国は農業が廃れているということはなく、アメリカやヨーロッパは農業が盛んで食料自給率も高い。自給率はフランスが133%、アメリカが119%、ドイツが91%、イギリスが74%(02年)、日本は40%。

(註2)ちなみにメキシコではNAFTA(北米自由貿易協定)発効により、アメリカから輸入トウモロコシが流れ込んできたため、伝統的なトウモロコシ生産者のうち200万人(!)もが離農せざるをえなくなり、サパティスタ民族解放軍の蜂起を招いた。

(註3)参照:のじれんHP 「野宿を強いられている人の多くは、北海道、東北、沖縄などの地方から若い時に親元を離れて出稼ぎに来ていた人々です」

(註4)輸入農産物が入ってきたり、農業が大規模化したために、農村にいられなくなった人々が、都市に出てスラムに住みつく傾向は、特に「南」の国々で著しい。都市への人口集中の原因のすべてが貿易の自由化にあるわけではないが、「南」の国々には、巨大なスラムを抱えたメガシティが次々と生まれ、地球は「スラムの惑星」と化している。

(註5)参考:2010年APECの成功に向けて(警察庁)

APECの危機をあおるために、警視庁は目茶苦茶なアンケート結果まで発表している。都民の6割が知らないと答えたAPECについてのアンケートで、なぜ5割が危機感を覚えていることになるのか?

APEC開催 都民の6割知らずSankeiBiz

APECテロ、5割が危機感=都民にアンケート−警視庁(時事)(「国際テロ組織や反グローバリズム団体などが国内でテロや激しい抗議活動を起こす可能性」について質問してやがる。いい加減にしろ。) ⇒反グローバリズムの「犯罪化」は絶対に容認できない 
関連日記:日本の農業がほぼ終わっている
写真は05年に韓国・釜山で、農民、労働者、学生ら1万5000人を集めて行われた反APECデモ。

posted by 鶴見済 at 13:24| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする

2010年10月15日

「宮下ナイキパーク」という名前は消えた!

「『宮下公園』の名称はこれまで通り『渋谷区立宮下公園』となります。」
                              ──ナイキジャパン社(註1)


驚いた。ナイキが沈黙を破って、とうとう国内向けにモノを言ったと思ったら、なんと「宮下NIKEパーク」という名前を取り下げてしまった! つまり施設命名権を買ったのに、命名はしないということなのだ!

そこまで当初の計画がボロボロになったなら、スケートボード場もクライミング・ウォールもやめて、一から計画を見直したらどうか。当初は最大の売りにしていたのに、今は隅のほうに目立たないように書いているこれらのスポーツ施設こそが非難されているのだから。公共の公園を、自社の「お客さん」のための施設にすることが問題なのだ(註2)。


宮下公園改造計画 イメージ図.jpgナイキは「反対派に配慮したわけではない」とわざわざコメントしているが(註3)、公共の公園に自社の名前を付けるのはおかしい、と考え直したことは事実だ。誰も反対しなかったら、こうはならなかったはずだ。


我々の生きづらさは、我々が反対しなければ、誰も改善なんかしてくれない(註4)。

忘れてはいけないことだが、小泉の弱者切り捨て政策を弱者が支持したせいで、この国の格差や貧困は悪化した。今政府が、少なくとも表向きは(註5)これらの解決に動いているのは、格差・貧困への反対運動があったからだ。行政の口車に乗って、反対運動(「抵抗勢力」なんて言葉もあった)には反対などと言っていると誰の思う壺なのかを、この過去から考えてみるべきだ。


(註1)ナイキジャパン・プレスリリースより。

「不法占拠」「公園が荒れたのは反対派のせい」といった、渋谷区とまったく同じイメージ操作に励んでいる(ゴミの放置はもちろん渋谷区のせい)。また、自分たちのせいで野宿者が半強制的に追い出されたことを、いいことだったかのように言っているのも不思議だ。

さらにナイキは地域の住民の方々の声をやけに重んじているようだが、渋谷の真ん中という特殊な場所にある公園を利用しているのは、ほとんどがよそから来る人だ。

(註2)あくまでも施設命名権のオプションにすぎないこれらの工事だけやるというのも、詐欺的なんじゃないか?
(註3)共同通信のニュースより。
最近CSRに力を入れている企業には、自らの業界を批判する環境や貧困問題のNGOと共同作業をしているところも増えているが、ナイキにはそんなことは望むべくもないらしい。

(註4)タバコ増税にもゼロ金利にも、普通に怒ったほうがいい。

(註5)国内の”ジニ係数”は、最新の調査で過去最大になっている。国内でも世界でも、格差は拡大する一方だ。
図は、宮下ナイキパークのイメージ図。ナイキは皆が使える公園のイメージを広めようとしているが、左半分はスケートボードやクライミングなどのスポーツ施設で完全に埋まっている。

ちなみに、今日のナイキジャパン社前での抗議に集まったのは約40人(うちスケボーを持っている人2人)。ナイキは出てこなかったが、面白かった。

posted by 鶴見済 at 21:15| 宮下公園ナイキ化問題 | 更新情報をチェックする

2010年10月03日

なぜ野宿者は攻撃されるのか?(追記2件あり)

宮下公園での無理矢理のナイキパーク建設は続いている。

渋谷区は、マスコミを使った反対者のイメージダウン作戦(註1)に続いて、公園内にまだ残っていた野宿者の小屋も壊し、荷物も撤去した。そこは唯一立入禁止区域からも外されていたし、予告もなく、行政代執行の手続も取っていないのに。
これに対して、4日には渋谷区に抗議行動が行われる。その他のアクションも続々と予定されている(註2) 守る会


宮下公園 有刺鉄線.jpg野宿者の存在自体が嫌な人も多いようだが、それなら行政に「ハウジング・プア」問題の解決を要求すればいいのだ。ナイキ・パークを作ることは本来、野宿者対策でもなんでもないのだから。

そもそもこんなに家賃の高い国で、持ち家を持たない全員が、毎月毎月何万円もの家賃を払えるわけがない。家賃を払えない、払いたくない人が出てきて当然なのだ。

生活するうえで家賃が高すぎること、カネのない者に優しい社会でないことは、この国で多くの人が感じている「生き苦しさ」であるはずなのに、怒りはそういう方向へは向かわない。野宿者や野宿者を守っている人たちに向いてしまう(註3)。


「反対運動自体に反対」(註4)という空気を大きくすることについても言えるが、行政は怒りの矛先を、本来向かうべき自分たちに向けず、言わば“仲間割れ”を促すことに全力を注ぐ。それにいちいち乗ってやることはない。


(註1)念のためにまた言うが、反対している人たちは誰でもアクセスできる状態を積極的に作りながら、やむを得ず監視行動をしていただけだ。そうしなければ着工してしまうわけだから。宮下公園は地獄のような場所だったかのようにも言われるが、自分は親子連れが監視のテントがある場所で遊んでいるのも見ている。ゴミが多かったのは、移動した野宿者が残した物が放置され、その上にゴミの投げ捨てが重なったためだ。ゲットー・ガーデンへの投げ捨てゴミの始末も大変だった。

ちなみに、【占拠】1 ある場所を占有して他人を寄せつけないこと。2 占領すること(大辞泉)、だそうだ。

(註2)12日(火)には上智大学で、宮下公園や墨田区の事例から公共空間と商業スペース等について考える緊急シンポジウムが開かれ、自分も出演する予定だ。詳細は後日。

(註3)参考ニュース:ロケット花火でホームレス襲撃 高校生3人逮捕 (産経)
こういう事件が起きる原因は、この社会の空気にあるという見方は当たっていると思う。
(註4)OurPlanetTV映像へのコメント欄YouTube)を参照。
参考映像:宮下公園を救おう!! 手作りサウンドデモ!! (これまでで最高のデモだった!)
写真は、ご苦労にも有刺鉄線まで張られた宮下公園。

追記:
自分も出演する上智大学でのシンポジウムの詳細が決まった。
宮下公園の問題は、特殊な場所で起きている特殊な出来事ではないし、自分自身の生きづらさにも深く関わる問題なのだ、ということを理解するためにも、ぜひ。もちろん無料。

<緊急企画> キラめく街、追い出される人々
テーマパーク化される都市の公共性

宮下公園・行政代執行、墨田区「資源ごみ持ち去り禁止条例」 から公共空間を問いなおす

追記2:
12日(火)、とうとう本格的な工事が始まることがわかり、早朝から阻止行動が行われることになった。
15日(金)には、ナイキ本社前での抗議行動もある。
詳細は ⇒守る会 ニュース ⇒宮下公園12日本格着工(読売)
また居住と人権に関する国連認定の国際的NGOである”HIC(Habitat International Coalition)”が、宮下公園での排除とナイキパーク建設に抗議する声明を発表し、全世界に渋谷区長、ナイキ本社、ナイキジャパンに抗議するよう呼びかけている! 世界の反応は国内とはまるで違う。
Stop the evictions at and the conversion of Miyashita Park to Nike Park! (HIC)
明日は、阻止行動に参加した後、ぜひ上智大学へ。

posted by 鶴見済 at 13:58| 宮下公園ナイキ化問題 | 更新情報をチェックする