「大人になれない若者」批判が流行っていた

80年代に「モラトリアム人間」という言葉が流行っていた。モラトリアムというのは「猶予期間」のことで、大学生などで「大人になれない青年」を非難する意味合いで広まった。大人になれないというのは、まずはサラリーマンになるのを嫌がることだ。けれどもそれだけではない。ハキハキ話す大人の態度が取れないことや、割り切れずに内面の自我にこだわる人まで、広く外向的・社交的になれない青年がモラトリアム人間とひと括りにされていたと言える。もっと詳しく言えば、大人(=社会に適応した人間)になることこそが人間として“アイデンティティ”を確立することで、それができずにぐずぐずしていることが「モラトリアム」というネガティブな意味合いで語られていた。精神科医が提唱して、精神医学界から広まった言葉で、他にも「ピーターパンシンドローム」「青い鳥症候群」「成熟拒否」など、似たような概念が精神医学界から色々提唱されていた。自分も精神科医から、そうした非難を毎度のように浴びていた。「君は大人になれない」「未熟だ」と。もちろんそんなことを言われながらも就職活動は嫌というほどやったが、「やってられるか」という気持ちでやった(そのせいか結果は悲惨だった)。その気持ちはゆずらない、というのは大事なところだ。もちろん会社で働きはじめた後も、その気持ちはゆずらなかった。念のために言うと、社会人として仕事をこなせるような人間ならこうは呼ばれないので、正社員か非正規かなどという問題は、ここでは関係ない。90年代の論壇的な世界で「大人になれ」という言説が広…

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