中身がギュッと濃縮されて詰まっているもの
若い頃は文章も音楽も、とにかくたくさん読み聴いていた。その頃いつも思っていたのは、「中身がギュッと詰まったものを出してくれないかな」ということだった。
接していた作品が多すぎたせいか、たいていのものを「つまらない」と感じていた。今にして思えば、必要以上にそう思っていた。読んだり聴いたりするのも大変で(今とは違っていちいちお金もかかる)、薄いものを大量に出すタイプの作者さんには、「作品は少なくていいから、出したいもの、言いたいことをギュッと絞って出してくれれば」と思った。(そうしてくれるとこっちも楽なのに、という勝手な願望なのだが)。
例えば、ビートルズのホワイトアルバムという2枚組のアルバムがある。リンゴ・スターがのちにあれを「1枚でもよかった」と言っていた。ホワイトアルバムには珠玉の曲がたくさんあるのだが、確かにいつも飛ばしてしまう、わけのわからない曲も多かった。自分なりに1枚だけのホワイトアルバムの曲目リストを作ってみると、あまりのカッコよさにしげしげとリストを眺めてしまったものだ(「ロックバンド・ビートルズ」が立ち現れた)。ギュッと詰まっているというのはそういうイメージだ。
70~80年代に2~4年に1枚、ポツポツと大作アルバムを出すスタイルを取ったピンク・フロイドにも畏敬の念を感じた。そうなると絶対に外すわけにはいかないのだが、それらの大作がどれも捨て曲がなくて素晴らしく、大ヒットしていた。
『ア・ロング・バケーション』の大ヒット以降、出せば売れるのはわかっていながら、…