2009年05月30日

反自動車産業、反経済成長、反買い替え

オルタ 09年3・4月号.jpg「自動車産業がいかに浪費の上に成り立ってきたか」について、今出ている『オルタ』3・4月号に書いている。
今世界で最も注目されている企業と言える「GM」(ゼネラル・モーターズ)は1920年代から、「毎年のモデル・チェンジ」という販売戦略により、従来の商品を次々と「時代遅れ」と感じさせることで買い替えを促し(註1)、業界トップのフォードを追い抜いたこと。

さらにGMは、全米で鉄道会社の株を買い取って鉄道を次々と廃止させ、自動車がなければ生活しづらい環境まで作って、生産台数を伸ばしたこと。
そして、日本では自動車作りが経済成長のための戦略産業に位置づけられ、今では自動車密度や道路密度が世界最高レベルの、平均車齢はアメリカより若い、自動車浪費大国となったこと。

──等々を通して、これ以上いらないものを作って生きる人生は虚しいので嫌だ、みたいな主張をしている。


(註1)この「計画的陳腐化」というマーケティング戦略は、服、家電、菓子や飲料、家庭用品、パソコン用ソフトなど様々なジャンルで、今でも我々を巻き込んでいるので、絶対に知っておいたほうがいい。なぜ我々は、一度買ったものを次々と買い替えさせられているのかがよくわかる。
『浪費を作りだす人々 パッカード著作集3』(V・パッカード、ダイヤモンド社、1967年)という本に詳しい。

「計画的陳腐化」の(企てる側からの)説明 http://www.mapscom.co.jp/wordplannedobsolecence.html

『オルタ』09年3・4月号 http://www.parc-jp.org/alter/2009/alter_2009_03-04.html



こういう「北」の国々で行なわれている(つまり我々の)浪費生活は、大雑把に言えば、「南」の国々と「自然界」からの搾取で成り立っている。どこかに負担をかけていなければ、こんなことが成り立つわけがないのだ。
「南北問題」(南北格差)は、実は「南」の人々ではなく、我々「北」の人間が自立できていないために生じている。

例えば、今地球上では65億人全員が食べていくために十分な食糧が作られている。しかし「南」は栄養不足で苦しみ、「北」は逆に栄養過多で苦しんでいる(註2)。単に配分の仕方が間違っているのだ。「北」が「南」から多くを奪いすぎている。これは食糧だけに限らず、「富」全体のこととして言える。

この格差はどうすれば解決できるのか?パイとピース.jpg
飢えた「南」の人々を救うためにも、経済成長の必要性が説かれている。パイの一片(ピース)を大きくするためには、円グラフのように丸いパイ全体を大きくすればいい、というのが19世紀から今に至るまで、アメリカが主導してきた経済成長主義の理屈だ(註3)。
これがおかしいのだ。ピースを大きくするためには、全体のなかでの配分を変えるだけでいいはずだ。万が一全体を大きくすることで、ピースが十分に大きくなったとしても、もう一方の搾取先である自然界がもたないのだから。
配分をまともにして、ごく一部の人間が富を独占するのをやめれば、経済規模などむしろ小さくなっても、世界は十分に成り立つに違いない。

けれども記事のなかでは、あえて第三世界や自然界といった“被害者”を立てていない。すでに溢れかえっている自動車を作らされ、買い替えさせられ続ける我々自身が、まるで過食症患者のように(と言っても他人事ではないが)十分に不幸な被害者だからだ。
よく見れば、今国がやっている自動車や家電の買い替え奨励も、グリーン・ニューディールどころか、雇用を生み出すためのニューディール政策ですらなく、単にトヨタやソニーといった国を代表する大企業の救済策になっている(註4)。

「もうたくさんだ」と言う以外にない。


(註2)参考:『食糧の世界地図』 エリック・ミルストーン他、大賀圭治監訳、丸善

食糧が満遍なく行き渡らない原因として特に挙げられるのは、穀物を牛や豚などの家畜の飼料にしてしまうこと、先進国における食品の廃棄、最近では穀物をバイオ燃料にして自動車を走らせるのに使ってしまうこと、など。

また最近では、「北」の国々のなかでも格差・貧困が拡大していて、コンビニ弁当が大量に捨てられる傍らで、食べていくのに困っている人々が出ている。

(註3)参考:『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』 C.ダグラス・ラミス 平凡社
(註4)もしかしたら最悪の”軍事的ニューディール”に向かうかもしれないが。

追加:GM破綻「喜びでいっぱい」=国民はもっとうまく経営−ムーア監督(時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a5%de%a5%a4%a5%b1%a5%eb%a1%a6%a5%e0%a1%bc%a5%a2&k=200906/2009060200629

posted by 鶴見済 at 22:01| 人間界の経済 | 更新情報をチェックする