2009年07月16日

G8と農地収奪と植民地主義

去年G8に反対するために、北海道まで行ってやってきたデモとキャンプの簡単なレポートと、宮下公園のナイキ化について書いた『オルタ』の記事がネットで読めるようになった。

http://www.parc-jp.org/alter/2008/alter_2008_09-10_yabasta.html


アフリカのバイオ燃料作物用プランテーション.jpgその反対運動が効いたのか、やけに影が薄くなった今年のG8では、貧困国の「農地収奪」に関する懸念が表明された(註1)。

「農地収奪」とは何か? ここ2年ほどの間に、世界では、先進国や新興国(註2)が「南」の貧困国(特にアフリカ)の広大な土地を、現地住民の承諾もなしに農地として買収したり借り入れたりする動きが加速しているのだ。これを進めているのは、バイオ燃料の原料供給地が欲しい先進国の大企業、食糧の供給地を確保したい食糧輸入国とその企業、金融危機を受けてより確実な投資先が欲しい投資銀行などだ。

こうした土地が、収奪した側へ輸出する農作物の単一栽培地になり、貧しい農民たちが搾取されてより貧しくなることは目に見えているので、「新しい植民地主義」として批判されている(註3)。


G8はこれに懸念を表明しているんだから、一見いいことをやっているように見える。けれども、まさにこういうことを散々やってきたのが先進国系の多国籍企業であって、それらが進出しやすいように環境を整えてきたのがG8だったのだ(註4)。

さらにさかのぼれば、こういう農地収奪は今G8を構成しているような西洋列強国による植民地支配から始まっているもので、その頃から植民地は、コーヒー-だのカカオだのといった腹の足しにもならない先進国向け農産物の単一栽培を押しつけられてきた。

植民地はその後政治的には独立を果たしたけれども、経済的にはまったく独立できていない。つまり「新しい植民地」どころか、まだまだ「古い植民地」の問題が解決してないのだ。

それなのにG8の懸念は、中国や韓国や中東湾岸諸国などが進めている農地収奪を規制することを念頭に置いている。

その構造は、世界の核兵器のほとんどを保有しているのが自分たちG8諸国なのに、「核なき世界」とか何とか一見素晴らしいことを言って、実質的にはイランや北朝鮮の核保有をけん制しようとするのとまったく同じだ。

G8のやっていることなんて、大体こういう「自分たちが頂点に立って富を独占している世界を、これからも維持していく努力」なんだと思っている。

そして、この農地収奪問題で中心的な役割を担おうとしゃしゃり出ているのが日本なのだ。日本も「食糧の安全保障」などと称して、商社が投資する形の海外農地収奪を進めようとしているからだ。

自給率を上げる努力もしないで、国内で増え続ける荒れ果てた田や畑を放ったらかしたまま、貧困国の土地を買ってまでして、我々は食べ物を海外の貧しい人に作らせたいのか? 

という反抗の思いもこめて、最近は畑作業も割とよくやっている(註5)


(註1)「農地収奪」に懸念 G8首脳宣言(中日新聞)

http://job.chunichi.co.jp/news/index.php?nid=692&ts=1247213820&PHPSESSID=5e43f77ea733aa9edcbf8ee3d9fed5a8

(註2)こういう呼び方も、工業発展するほど進んでいると思い込んでいる北側工業国が名づけたものなので、基本的に間違っているが。中国のどこが新興国なんだ。

(註3)参考:北林寿信 「食料『新植民地主義』への懸念」 (『世界』09年8月号)

(註4)日本が中国をはじめとするアジア諸国から輸入している野菜も、大部分は日本の企業が進出していって現地で輸入用に作らせている(開発輸入という)。

(註5)その畑の様子は、「ベジしょくどう」(高円寺の素人の乱9号店でやっている完全菜食主義<ビーガン>定食屋。とてもうまい)のブログで見れる。
http://vegecanteen.seesaa.net/category/6285332-1.html

写真は、地平線までバイオ燃料用作物だけが植えられたアフリカの単一栽培農地(プランテーション)。青々とはしていても、生物多様性は恐ろしく貧困。
posted by 鶴見済 at 22:57| 人間界の経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする