2009年10月11日

電通のPR戦略を分析する

ソフトバンク 09年夏モデル19種.png「買うことだ。どんなものでも」――アイゼンハワー元米大統領(1950年代後半の大恐慌以来の不況時に、景気回復のため国民は何をするべきか、と聞かれて)


60年代に電通PRセンター社長が著書で公にした、以下の「わが社の戦略十訓」(註1)が我々を戦慄させるのは、まるでアイゼンハワーの景気対策のように、それが今も変わらずこの社会に生きているからだ。
ただし念のために言うと、これはひとつの企業やPRの世界だけが使っている戦略ではない。売るという行為があれば、どこにでも潜んでいる手口なのだ。


1.もっと使用させろ 2.捨てさせ忘れさせろ 3.むだ使いさせろ 4.季節を忘れさせろ(註2) 5.贈り物をさせろ(註3) 6.コンビナートで使わせろ 7.キッカケを投じろ 8.流行遅れにさせろ 9.気安く買わせろ 10.混乱をつくりだせ


これらの元になったとされる、アメリカの社会学者V・パッカードがまとめた「浪費をつくり出す戦略」(註4)もあわせて読むと、よりわかりやすい。こちらは50年代のアメリカで使われた販売戦略をまとめたもので、ここではその7つの枠組みに自分なりの解説や今風の事例も含めた(註5)。


1.もっと買わせる戦略

 共有から、一部屋にひとつ、一人にひとつ、さらには一人に複数へ(註6)。例:男性用・女性用別の整髪剤、朝にもシャンプー。

2.捨てさせる戦略

 使い捨て化して、使うたびに買わせる。例:紙製の食器、使い捨て容器、使い捨て傘、使い捨てカメラ、使い捨てコンタクトレンズ、使い捨てカートリッジ……。

3.計画的廃物(陳腐)化の戦略 

 a)物理的陳腐化 丈夫・頑丈には作らない。

 b)機能的陳腐化 今持っているものは機能的に劣っていると感じさせる(実際には、新製品に余計な機能が増えているだけにすぎなくても)。

 c)心理的陳腐化 最も重要。今持っているものが流行遅れだと感じさせる。例:年に何度も発表される携帯電話のニューモデル。

使い捨てデジタルカメラ.jpg4.混乱をつくり出す戦略

 価値の判断を鈍らせる。例:「3個で○○円」、無料サービス品の添付、通話料金の割引制度、ファストフード店のセットメニュー。

5.月賦販売による戦略

 クレジットと分割払いで、現金がなくても、今買えるように。

6.快楽主義を植えつける戦略

 a)浪費の正当化──「消費は美徳」という価値観の植えつけ。

 b)浪費の口実を与える──本日限り、期間限定価格、記念日などの活用。例:「イースターは新しい靴で」「バレンタインデーには男性からもチョコを」。

 c)便利さの提供──すぐに作れる、すぐに使える、すぐに届けられる(気安く買わせる)。例:ファストフード、ネット販売。

7.人口増加を利用する戦略

 大勢の人は単に大きな市場と見なす(若者・子ども市場には“将来の顧客”も含まれているので特に大事)。例:団塊ジュニアへのマーケティング、中国・インドへの進出など。

細かくやっていると切りがないので、あとはパッカードの本を図書館で読むなどして、自分で今風の事例を探してみてほしい(この本は今でも身に覚えのある事例で溢れかえっているが)。こんな戦略の宝庫である家電用品店、コンビニ、ドラッグストア、服屋、レコード屋、スーパー、デパート等々もこういう視点で見て回れば、楽しめる場所になるかもしれない。

では、これらの戦略によってムダになっているものは何か? もちろん資源もエネルギーもムダになっているが、一番取り返しがつかないのは、これら全てに費やされている「我々の労働」なんじゃないか。

買わされている側はもちろん、買わせている側も反乱を起こすべきだ。「こんなくだらないこと、やってられるか!」と。


(註1)参考:『PR戦略』(永田久光、東洋経済新報社、1963年)他
(註2)スーパーの食料品売場は、いつが旬なのかわからなくなった果物や野菜で溢れている。

(註3)ただし、商売に乗せられているのでなければ、贈り物自体は悪いことではない。
(註4)参考:V.パッカード『浪費をつくり出す人びと』ダイヤモンド社(原著:The Waste Makers 1960, “waste”は「浪費」だけでなく「ゴミ」の意味でもあることは重要)

(註5)『ごみ問題の総合的理解のために』(松藤敏彦、技報堂出版、2007)という本によるまとめも参考にした。

(註6)50年代のアメリカでは、すべての家庭用品の売上げ倍増を狙って、「一家族にふたつの家を」という宣伝までもが行なわれた(!)。「共有すること」は、こういう戦略に対する強烈な反対行動なのだ。

図上は、ソフトバンクが発売した19種類の09年夏モデル携帯電話。下はついに発売された使い捨てデジタルカメラ、その名も「ECO digi MODE(エコデジモード)」(どういうエコなんだ!) 

参考:「使い切りデジカメ」先行販売

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0808/13/news031.html

関連日記:テレビのアナログ放送終了に反対する

http://tsurumitext.seesaa.net/article/40379344.html

posted by 鶴見済 at 22:17| 人間界の経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする