「貧しい」国々では、水道や、電気や、ガスや、保険や、学校や、植物の種や、安全の基準や、刑務所や、鉄道などの、みんなでつくった、みんなのものが、どんどん灰色に「プライヴェタイゼーション」されていました。(略)
プライヴェタイゼーションは、国によって、「私有化」とか、「民営化」とか、「社会化」とか、呼ばれていました。(略)
しかし起こることは、どの国でも同じでした。一言で言うと、それは、「人のことを人が決める」やり方から、「人のことを灰色が決める」やり方になることでした。(略)
政府を中心とした「民主主義」は、下から、人びとが怒って、やることを変えられる仕組みでした。灰色は、そんな仕組みは、気に入らないのでした。
──小沢健二『うさぎ!』 第二話(註1)より
宮下公園ナイキ化は、もちろん民営化(=私有化)の一種だ(註2)。
こうして、なんでもかんでも企業や経済の(つまりカネ儲けの)原理に従わせて、「公共」の部分を小さくするのがいいと進められたのが、日本では小泉・竹中の構造改革だった。
その結果、例えば社会福祉やセーフティーネットがなくなり、今は世界中でその見直しの時期に入っているのに、まだまだ「官から民へ(公から私へ)」や「官民連携」がいいと信じて疑わない人たちがいる、ということなんだろう。
渋谷では28日(日)に、年間3万人の自殺者を出すこんな社会にも、宮下ナイキ化にも反対する「葬式パレード」が行なわれた(註3)。これらのことは、一見関係ないように見えるかもしれないが、カネ儲けの原理が我々の生活を蝕むことから来る「生きづらさ」を考えれば、自分には別のことだとは思えない(註4)。
その後、宮下公園でバナーを作り、掲げた。原宿―渋谷間の電車に乗れば、山手線の内側のほうの窓の外に見える(註5)。ぜひ見てほしい。
そして明日31日はいよいよ反ナイキ化デモ(註6)、そして明後日4月1日は工事着工予定日だ。一体どうなるのかわからないが、せっかくの「下から、人びとが怒って、やることを変えられる仕組み」を諦めてしまっても、いいことはなさそうだ。
(註1)『子どもと昔話』2006年冬号掲載。個人的には、「もう古いの計画」についても書かれているこの第二話が特にいい。言うまでもないが『うさぎ!』は必読だ。
(註2)参考日記 ⇒宮下公園ナイキ化の真相がここに の参考の部分
(註3)宮下公園アーティスト・イン・レジデンスのHPに写真が9枚出ている。ノーナイキ・ファッションショー夜の部の映像もアップされている。宮下公園ではカフェや集会など、毎日のように何かが起きている。
(註4)参考日記 ⇒日本人が豊かになれない理由
(註5)A.I.R のHPにもある「Ghost Travelling,,29 March 2010」という映像作品は、そのハッとする瞬間を見事に捕らえているので必見。
(註6)詳細 ⇒みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会(ピーター・バラカンさんからのメッセージも紹介されている)