出版フリーランスも黙るのをやめた

出版フリーランス・デモ.jpgフリーライターというのは、常に派遣切りにあっているようなもので、今仕事があってもいつなくなるかわからないという恐怖といつも戦っている。

しかもこの世界には「悪いしきたり」があって、仕事の条件など、すべてが曖昧な口約束で成り立っているのだ。例えば仕事を受けてもギャラの話はまずしてもらえない。原稿料がいくらかわかるのは、仕事が終わり請求書を送る時、あるいは口座に振り込まれた時なのだ(註1)。つまり、自分がいくら貰えるのかわからないまま、打ち合わせ、取材をし、原稿を書き、直し、時には全部書き直させられたりしているのだ。

しかも400字1枚3~4000円程度の原稿料など、時給に換算したら最低時給を下回ることがほとんどなんじゃないか?


他のライターや編集部が書く記事の下調べをする「データマン」の仕事ともなると、顎足で指図されつつ街頭でアンケートを取ったり、常磐線の各駅前の店の朝食のメニューを聞いて回ったり、それをまた何度もやり直しさせらされた挙句に、小遣い程度のカネが振り込まれたりする。
いや、そんな仕事でも身の危険がない分だけマシだったりするので、悲惨な体験など書いていても切りがないが、確かに心の底からこう思った。

「こんな人生、生きてられるかよ。」と(註2)。


けれどもフリーライターは、仕事がなくなる恐怖と戦う、弱い立場にいる。編集者に「こいつに頼むのは面倒くさい」と思われないように、事を荒立てないのが普通である。こうして会社側に都合のいいこの「悪いしきたり」は、恐らく何十年も温存されている(註3)。

これはライターに限らず、カメラマン、イラストレーター、フリー編集者、デザイナー、校正者など、出版フリーランスに共通して言えることだ(註4)。


しかもインターネットの普及で、ただでさえ出版業界が大きく傾いている時に金融危機が見舞い、この「悪いしきたり」はますます悪化の一途をたどっている。そこでついに、本の町・神田で出版フリーランスが立ち上がることになった。

出版フリーランス・デモ実行委員会 公式ブログ

525日(火)1800分集合、1840分出発 千代田区西神田公園集合 賛同者募集中


経済の危機がまず圧迫するのは、必ず弱い立場にいる者たちだ。もう、まとまって文句を言わないと、事はますます悪くなるだけだ。失業どころか、生活保護を受ける同業者も出はじめた。

しかもフリーランス稼業は孤独との戦いでもあるので、横のつながりそのものが大きな武器になる。
あとは、反対行動自体(というか「左翼的なるもの」?)に対する抵抗感をどうするか、ということになるのかもしれないが、それについては色々思うところもあり、またいずれ書こうと思う。

 
(註1)ここでギャラの話もなく、「今回はどうもありがとうございました」となったら、“ノーギャラ=ただ働き”である。これは、初めからノーギャラで書くつもりでいるzine(同人誌)などでの話ではなく、相手がそれでカネを儲けている商業誌での話だ。

(註2)学校に行っても工場に就職しても、こう思いながら生きることが多かったが。

(註3)だったら大きい会社に就職すればいいかというと、ライターの場合、組織に所属できても小さな編集プロダクションがせいぜいだし、「自由な言論活動」のためには、フリーであることは必要条件なのだ。

(註4)出版に限らず、ミュージシャン、俳優など、フリーランスが基本の仕事はどれも同じ問題を抱えているようだ。

参考映像:自分がこの問題について体験などを話した、インディユニオンの番組(1) (2)

参考リンク:出版ネッツ(出版フリーランスのための労働組合)

       インディユニオン(フリーランス、SOHOなどの総合的労働組合)