「『宮下公園』の名称はこれまで通り『渋谷区立宮下公園』となります。」
──ナイキジャパン社(註1)
驚いた。ナイキが沈黙を破って、とうとう国内向けにモノを言ったと思ったら、なんと「宮下NIKEパーク」という名前を取り下げてしまった! つまり施設命名権を買ったのに、命名はしないということなのだ!
そこまで当初の計画がボロボロになったなら、スケートボード場もクライミング・ウォールもやめて、一から計画を見直したらどうか。当初は最大の売りにしていたのに、今は隅のほうに目立たないように書いているこれらのスポーツ施設こそが非難されているのだから。公共の公園を、自社の「お客さん」のための施設にすることが問題なのだ(註2)。
ナイキは「反対派に配慮したわけではない」とわざわざコメントしているが(註3)、公共の公園に自社の名前を付けるのはおかしい、と考え直したことは事実だ。誰も反対しなかったら、こうはならなかったはずだ。
我々の生きづらさは、我々が反対しなければ、誰も改善なんかしてくれない(註4)。
忘れてはいけないことだが、小泉の弱者切り捨て政策を弱者が支持したせいで、この国の格差や貧困は悪化した。今政府が、少なくとも表向きは(註5)これらの解決に動いているのは、格差・貧困への反対運動があったからだ。行政の口車に乗って、反対運動(「抵抗勢力」なんて言葉もあった)には反対などと言っていると誰の思う壺なのかを、この過去から考えてみるべきだ。
(註1)ナイキジャパン・プレスリリースより。
「不法占拠」「公園が荒れたのは反対派のせい」といった、渋谷区とまったく同じイメージ操作に励んでいる(ゴミの放置はもちろん渋谷区のせい)。また、自分たちのせいで野宿者が半強制的に追い出されたことを、いいことだったかのように言っているのも不思議だ。
さらにナイキは地域の住民の方々の声をやけに重んじているようだが、渋谷の真ん中という特殊な場所にある公園を利用しているのは、ほとんどがよそから来る人だ。
(註2)あくまでも施設命名権のオプションにすぎないこれらの工事だけやるというのも、詐欺的なんじゃないか?
(註3)共同通信のニュースより。最近CSRに力を入れている企業には、自らの業界を批判する環境や貧困問題のNGOと共同作業をしているところも増えているが、ナイキにはそんなことは望むべくもないらしい。
(註4)タバコ増税にもゼロ金利にも、普通に怒ったほうがいい。
(註5)国内の”ジニ係数”は、最新の調査で過去最大になっている。国内でも世界でも、格差は拡大する一方だ。
図は、宮下ナイキパークのイメージ図。ナイキは皆が使える公園のイメージを広めようとしているが、左半分はスケートボードやクライミングなどのスポーツ施設で完全に埋まっている。
ちなみに、今日のナイキジャパン社前での抗議に集まったのは約40人(うちスケボーを持っている人2人)。ナイキは出てこなかったが、面白かった。