「大企業が儲かれば、その儲けが下々に行き渡って、社会全体が豊かになる」という“トリクルダウン(おこぼれ)幻想”に、この社会はいつまでだまされ続けるのか?
日本で最も好景気が長く続いたのはいつだったか? それは60年代でも、80年代でもなく、2002年から07年までの69ヶ月間の間だ。「いざなぎ越え景気」とも呼ばれた。
この時期に景気がいいと実感した人はほとんどいないだろう。この時期にこそ貧富の格差が拡大し、正社員の数も平均給料も減り続け、実質的に企業には減税、個人には増税が行われたからだ(註1)。
好景気だったのだから、上のほうの一部は大々的に儲けた。けれども、おこぼれなんかなかったのだ。
そして性懲りもなくまた国は、企業に減税、個人に増税しようとしている(註2)。企業に国際競争力をつけさせることで、経済成長を促し、雇用を拡大し、給料を増やし、国民を豊かにするためだという。国民を豊かにしたければ、国民のために税金を使えばいいのだ。いつでも「まずは大企業を儲けさせてから」という話になるのは、それだけが目的だからだ。
経済界(註3)の言うことは聞く。アメリカの言うことも聞く(註4)。そして国民の言うことは聞かない。これが、この国の政府が戦後やってきたことのすべてだ、と思える(註5)。
(註1)参考:国民が「いざなぎ越え」景気を実感できない理由 (森永卓郎)
(註2)参考:法人税率5%引き下げ 個人は計5500億円増税 (朝日)
「思い切って(税率を)5%下げて、投資や雇用を拡大することで働く人の給料を増やして経済成長を促し、デフレを脱却する」との“トリクルダウン幻想”を首相が堂々と語っている。次に来るのは当然、財政危機を理由にした消費税の増税だ。これでは小泉・竹中路線と何も変わらないが、新聞がこれを応援しているのもムカつく。
(註3)経団連と言ってもいい。
(註4)参考:思いやり予算、5年間は総額維持─日米合意 (時事)
(註5)ただし鳩山内閣だけは、やや例外。
関連日記:「経済界優先」という逆コース
図上は、大企業の内部留保の推移。好景気の時期にぐんぐん増えて、今は過去最大である。下は日米欧の労働分配率の推移。労働分配率とは、つまり給料に当てる割合。こんなに給料を下げてるのだから、世界的に大企業の笑いは止まらない。