2006年11月14日

書評:『海の帝国ーアジアをどう考えるか』

umino teikoku.jpg書評:『海の帝国ーーアジアをどう考えるか』 (白石隆著 中公新書) 

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実はこの本を読むまで、地球のメインの部分は「陸」であって、残りの「海」は余白のように思ってたかもしれない。
けれども、ヒトの主要な交通手段は、昔から「船」だったわけで(あとは馬とか)、列車や自動車、ましてや飛行機なんかが出てくるのは近代に入ってからだった(日本で空路の海外旅行が始まったのなんか、1970年代だ)。

そう思って世界地図を、海をメインにして白黒反転させて見ると、実に色々な「海上の道」(by柳田国男)とその港である大都市が浮かび上がってきて、面白かった。

この本の著者は、東南アジア研究の専門家である。
確かにインドネシアのような国の形は、海を中心に見てみないと、なぜそうなってるのかわからない。
そして、東南アジアも含む東アジアの臨海部(というかオセアニアも含む西太平洋)が、ひとつの大きな文化・交易圏となってきたことが説かれる。
(こんな風に、ヒトの文化圏も地球地理的に決まってしまうものなのだ。)

しかしその文化圏も、欧米列強によって半植民地化され、ここ50年はアメリカのヘゲモニー下にある。日本はその傘の下でbQとしてやってきたわけだ。では今後、アジアは、日本は、どうしたらいいのか?

著者によると、アメリカがアジアにおけるヘゲモニーを放棄することは、当分考えなくていい(そうでなければ中国が覇権を握ることになるが、それもまたありえない、と言う)。
そこで日本は、50年くらいの時間をかけて、(急にではなく)ゆっくりと「アジアの中の日本」に戻っていくのがいいとしている。

2000年に出版された本だが、今でも実に妥当な提案だ。
アメリカが現実的にヘゲモニーを手放さないからという理由だけで、それを認めてしまうのであるなら、それはおかしい。そんなことでは、いつまでもアジアの富をアメリカに持っていかれ続けるだけだからだ。
しかしこの著者は、そういった”理想像も持たない、行き当たりばったりの現実主義者”でもない。あまり反論の余地がないかもしれない。

しかし実際の日本は、より親米色を強めて、bQの地位を強化しようとしている。
こういうことだと、アジアの自立への道は一層険しい。日本のメリットにもならないはずだがなぁ。

ラベル:アジア
posted by 鶴見済 at 21:11| レヴュー | 更新情報をチェックする