働けないのは「自己責任」なのか?

雨宮処凛 生きさせろ!.jpgニートやフリーターといった「働け(か)ない若者」が増えてしまった背景には、労働や仕事に対するメンタルな問題も重なっていると思う。「ひきこもり」や「心の病」の問題もなだらかにつながっているはずだ。

うつ、内向的、口べた、対人関係が苦手といった人にとって、この社会で全盛を極めている“人を相手にする仕事”はもともとキツイものなのに、ネオリベラリズム的な競争至上主義の労働環境は、ますますそういった人たちを仕事から遠ざけたに違いない。
それだけでなく、普通の人のなかにも「仕事が苦手」という意識を植えつけてしまったんじゃないだろうか? 多くの人が、仕事に対する自信を失ったというか。

そもそも今のこの国の労働・仕事について言うなら、適応できない側よりもむしろ、労働自体がキツすぎるのがおかしいのだ(日本人の残業時間は世界一長いし、カローシ<過労死>という日本語は世界共通語になってしまっている)。
会社側も、そんなにバリバリに社員をこき使って「発展」を目指すんじゃなくて、「スローな労働」みたいなものを推進していったほうが、時代にも合ってていいと思うんだが。
そういう普通な労働環境を整えようとせずに、「再チャレンジ」を無理強いしても、問題は根本的には解決しないだろう。

だから、仕事ができなくて何もすることがなく、ベッドに横になって将来の不安と戦ってる人も、「自己責任」なんていう政府の宣伝文句で自分を責めすぎずに、かわりに企業や国を責めてもいいと思う。  

関連推薦図書:『生きさせろ!──難民化する若者たち』 雨宮処凛著、太田出版