2014年04月02日

できることがあると教えてくれる本『コンバ』書評

51+Hiul7aFL__SL500_AA300_.jpgこれまでに書いた書評などのなかから、ここでも紹介しておくべきものはアップしていこうと思う。やや遅きに失した感があるけれども。
まずはマティルド・セレル著、鈴木孝弥訳の『コンバ』から。反抗のために誰にでもできることが書かれている本。
ちなみにseesaaブログの機能が劣化してしまい、文字の大きさを細かく調整できなくなったため、見苦しくて申し訳ない。劣化反対。

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間接民主制の社会なのだから、社会をよくするためには政治を変えねばならず、我々は政治家を怒鳴り続けていなければならない──。もちろんその通りだ。けれどもそのことだけにとらわれていると、自分では何もできないような気がしてくる。そんな時に、本当はできることなどいくらでもあると気づけば、途端に世界は一変して見えるだろう。直接行動を知ることの大きなメリットはそれだ。

本書は、そんな普通の人にもできる直接行動の方法を網羅した実践のためのテキストだ。著者はフランスのジャーナリスト/ラジオ・パーソナリティのマティルド・セレル。パリのFM局“ラジオ・ノヴァ”で彼女が毎日放送していた人気コーナーの内容がまとめられている。
ゴミ箱に捨てられた食べ物を回収しよう。シャワー中におしっこをしてトイレの水を節約しよう。いいことをしている店に大勢で詰めかけて、大繁盛を演出しよう。さらには、強制国外退去になる移民を飛行機から降ろしてしまおう、などという大それたものまで。環境破壊や人権侵害や経済的搾取に反対しながらも、まったく優等生的ではない88ものアイデアは、読むだけでも解放的な気分になる。けれどもそれらは著者の奇抜な思いつきではなく、すでに広く行われていたり、綿密な計算のもとに提唱されたものだ。こうした直接行動は、2000年代に入って欧米で盛んに行われるようになっており、その方法も広く共有されている。

そして是非この本の膨大な註釈に圧倒されてほしい。異議申し立てが根づいていない日本とはまるで違う、フランスという国の空気を感じ取ることができる。同時に、デモや抗議に足しげく通いつめ、ドラムを叩く訳者・鈴木孝弥氏の抵抗の戦い(コンバ)への誘いが行間から溢れてくる。その熱意がなければこんな註釈は書けない。こういう力作は、無力感に苛まれている多くの人に読んでほしい。

(『ミュージックマガジン』2013年5月号)
posted by 鶴見済 at 12:05| レヴュー | 更新情報をチェックする