2011年7月24日までに、テレビ地上波のアナログ放送が終了することにも文句を言いたい。
これによって、国内に1億台あるとも言われるアナログテレビも、ビデオも、テレビ用チューナーがついてるものはすべて、そのままでは使えなくなる。総務省はデジタルチューナーを買い足せばいいと言うが、地上デジタル放送になると、嫌なことに画面のサイズまで16:9の横長に変わる。サイズが合わないんだったら、最終的にはほとんどの人がデジタル用の横長画面テレビに買い替えざるを得ないんじゃないか?
家電メーカーにとって、こんなうまい儲け話があるだろうか?
家電販売の基本は「買い替えさせる」ことだ(自動車でも服でも同じだが)。
本来のメーカーの良心的な態度とは、一生使えるような丈夫でいい製品を作って、あとは修理などのアフターサービスを充実させることだったはずだ。が、そんないい製品が全員に行き渡ってしまったらどうなるか? もう新製品はひとつも売れなくなってしまう。
そこでメーカーは、「一家に1台から2台の時代へ」などと宣伝したり、モデルチェンジやバージョンアップで以前のものを「古い、ダサい」と思わせたり、従来の“規格”を一方的に変えて使いづらくしたりして、我々に新規購入を迫る。
音楽関係の商品を見ても、カセットテープ、CD、DAT、MD……などと、新しいモデルを次々と繰り出しては、まだまだ使えるハードやソフトを隅に追いやって、新製品を買わせてきのだ。
こうすれば、たとえ本来の限界が1億台であっても、2億でも3億でも売れるわけだ(ちなみに「修理するくらいなら買っちゃったほうがいい」と思わせるように修理代を設定するのも、あるいはPSE法だって、そんな手口のひとつなんだろう)。
そんななかでも今回の「アナログ放送終了」のタチの悪さは、ユーザーへの配慮のなさや、使えなくなる製品の数からしても破格だ。
大体家電メーカーの人も、「特需」なんて騒いでるようだが、いくら会社が儲かっても、自分たちが一生懸命作った製品が捨てられてしまって、わざわざまた全部作り直すだなんて、嫌じゃないのか?
しかし「経済成長する」というのは、大体こういうことなのだ。
経済成長の指針であるGDPとは「国内総“生産”」のことなのだから、大まかに言って、“生産”が増えれば成長率は上がり、景気がよくなったとされる(もともと要らないダムの工事をひとつ起こすだけでも、経済は成長するのだ)。
その分、余計な出費がかさみ、仕事は忙しくなり、資源は無駄になり、ゴミが増える。企業にとってはそれがベストだが、そこに生きてる我々は単に大変になるだけじゃないのか?
そんなものには付き合いきれない。
デジタル放送なんてやりたきゃやればいいが、これまでのテレビやビデオもそのまま使えるように、アナログ放送も残せと言いたい。
「地上デジタル」化はもともと国の政策なんだから、税金を払ってる以上、文句を言う資格がある。