エリートがB層(大衆)をだましている

B層のポジション.pngごく一部のエリート(と自負している人たち)が、大勢の人たちを犠牲にして、自分たちばかりが利益を得るような社会を作っていきたかったら、どうするだろうか?

普通の民主主義社会では、まともにやっていたのでは多数決で負けてしまう。そんな時にやるのが世論操作や大衆操作、つまりその大勢の人たちをある意味で、聞こえは悪いが、「だます」ことだ。自分で判断ためのする材料を提供するのではなく、都合のいいほうに誘導するのだ。
民主主義社会というのは初めから、こういうダーティな側面を持っている。

この国でそれが行われている証拠として一番わかりやすかったのが、前回の総選挙の半年ほど前に国の依頼を受けてあるPR会社が税金で作った、かの有名な『郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略』の企画資料(↓)だろう。

http://tetsu-chan.com/05-0622yuusei_rijikai2.pdf

この資料は、隅々までいちいち興味深いんだが、それはこの国が陰でやってる重大なことの氷山の一角が、ここに見えてしまってるからなんじゃないか?

ここで“B層“というのは、主婦や子供やシルバー層、「具体的なことはわからないが、小泉首相のキャラクターを指示する層、内閣閣僚を指示する層」とされていて、「最も重要な点は、郵政の現状サービスへの満足度が極めて高いこと」(!)だそうだ。そして「B層にフォーカスした、(郵政民営化合意のための)徹底したラーニングプロモーションが必要と考える。」らしく、そのプロモーション戦略もあれこれ考えられている。

そもそも「民営化」というのは、公営だったものを資本主義経済のフィールドに放り出して、国の負担を減らし、自由競争にさらすという、新自由主義(ネオリベラリズム)の基本中の基本政策で、結果的に損をするのは大勢の一般の人たちのほうだ。しかもその人たちが現状に極めて満足してるっていうのに、こういうことを考えるとは……。

このB層を「IQが低い」と位置づけたことがことさら話題になったけれども、それはまるで悪徳商法に長けた人が、「引っかかるほうがバカなんだ」と言ってるようなもんだ(悪徳商法でも大衆操作でも、だまされた側じゃなくて、だました側を責めるべきだろう)。
こういうことを言う人たちは、エリート意識の塊みたいなものだろうから、エリートに都合のいい政策はどんどん広めたいだろうと思う。

そしてPR(広報)会社なんて言っても、実態は広告代理店とほとんど変わらない。ここで使われているマーケティングとかセールス・プロモーションといったテクニックは、当然のことながら広告代理店が練り上げていったものだ。

広告業界は普段は商品の広告を扱っているが、戦争になったら政治だって扱ってきたし、最近は普通に政党のCMなんかも作っている(やらせとサクラが話題になった小泉前首相のタウン・ミーティングにも電通の社員がかかわっていた)。
こうした広告業界が絡んだ政治的な戦略には、最大限の注意を要すると言っても過言じゃないだろう。
(「エリート気取りの人たち」にも、政界人、財界人、官僚、学者……と色々いると思うが、この広告業界の人というのは、特に見えにくくてタチが悪い存在と言えるかもしれない。)