「危ない」だらけのフィリピン、生き生きした感覚をなくした我々

DSC_0974.JPGフィリピンのセブ島とその近辺を、10年ぶりに2週間ブラブラしてきた。
日本とはまるで違う「危ない」だらけの場所だった。
けれどもそれが嫌だったかというと、そうでもない。
それどころか、歩いているうちに生き生きしてきた。
我ながらつくづく考えてしまった。


「危ない」だらけとはどういうことか。
まずは犯罪だ。
例えばセブ島最大の都市セブシティのダウンタウン(貧困地区)。
ここの目抜き通り(コロン通り)や巨大マーケット(カルボンマーケット)は、ガイドブックでも行ってはいけないとか、車から見るだけにしておけと言われるところ。
確かにスリはいるようだ。歩道ですら満員電車状態なので、カバンは前でしっかり持っていたほうがいい。
ストリートチルドレンのたかりも多くて、子供だからと安心してはいけない。
けれどもダウンタウンはとても広くて、むしろこの街のメインだ。
スラムではなく普通の人々が暮らしているのだし、行ってはいけないなどという扱いはちょっと腹立たしくもある。


DSC_1295.JPGそして食べ物の菌。
これ以降は大都市ダウンタウンでも、地方都市・田舎町でも同じだ。
屋台では店頭に一日中食べ物を出しているので、衛生的には日本ではアウトだろう。
加熱もせず日が当たったりしている。
けれどもこの屋台飯が異様においしいので、腹をこわすぞと言われるがこればかり食べていた。


そして事故・怪我の危険も多い。
10年前に比べれば横断歩道・信号は増えたものの、まだまだ多くない。
車が通らないタイミングで道を渡るのは当たり前だ。
自分はレンタルバイクをよく借りていたが、まわりの運転は乱暴で、交通違反を取り締まる人など見たことがない。


さらに感染症の危険もある。
フィリピンには犬が多いが、野犬には狂犬病を持っているのがいると言われる。
けれども犬はどこでも近くに寄ってくるので、万一が怖いなら行かない他はない。

都市部の川はゴミだらけで、色が豚骨スープみたいに白濁していることも多い。
衛生的にいいわけがない。

そして不思議なのはこうした「危ない」とされる事柄は、犯罪、ばい菌、怪我など各々別の分野なのに、どれも同じ程度にまとまって存在することだ。


DSC_1253.JPG大都市には反対に裕福な一帯もある。
そこは日本と同じかそれ以上に、危険が排除されている。
ガードマンはうじゃうじゃいるし、食べ物は皆冷蔵され包装されている。
もちろん交通も安全だし、ゴミなんかひとつも落ちていない。
道の端でたむろして「アンニョンハセヨ~」などと声をかけてくる人もいない(韓国人だと思われてよくこう声をかけられる)。
こういう場所では、何も考えずに自動機械のように買い物をしていればいいので、とても楽ではある。
けれども気分は沈んでくる。特に旅をしているのなら、ここにいてもしょうがないと感じる。

反対にダウンタウンや地方の町では、疲れるけれどもワクワクドキドキしっぱなしだ。
そして生き生きしてくる。


DSC_0672.JPG今回の旅の目的は実は、サンゴがある海岸に行ってシュノーケルをすることだった。
4つの場所で見まくった。
自分がシュノーケルをするうえで重視しているのは、ツアーとして人に連れて行ってもらわないこと。自分で勝手にいい場所を探して、サンゴと熱帯魚を見つけることだ。
ただし勝手に海に泳ぎ出すシュノーケルもまた危ない。
ただし今は10年前と違って、サンゴもガイドに連れて行ってもらわないと見られないようになったところがあった。
そういう場所のサンゴは特に素晴らしい(だからこそそうやって守っている)。
けれどもそれでは自由さがないので、感激は半分くらいだった。

まあ大体わかっている。
自分で考えて、自分で決めて、自分で行動して、素晴らしい景色に出会うからこそ面白いのだ。
冒険であり、ある種のゲームだなとも思う。
ダウンタウンや田舎町を歩いている時のワクワクも同じだ。

その生き生きした何かが、危険を排除しきった裕福な一帯にはない。


そして世界で一番、この裕福な一帯そっくりなのは東京だ。
世界一危険を排しつくした、世界一安全な街は東京だ。
裕福とはいえ、NYやロンドンやパリはそうではない。


人間の社会は文明が進むにつれて、生命の危険になるようなものを排除していく。
それは当然だし、そのほうがいい。
けれどもそれとともになくしていくものがある。
「手すりにおつかまりのうえ、黄色い線の内側で~」などと散々注意をされて、安全に行動する生活。
「危ない橋を渡るな」という生き方全般についての注意だってある。
それが行き過ぎてしまったら、どんなにつまらないだろう。


この国では生き生きした感覚がどうしてなくなるのか、我々の生がどういうものなのか、ちゃんと考えたほうがいい。
このあたりはよく言っていることなので、これ以上は書かないでおく。


※一番上の写真は、フィリピンの大衆食堂カレンデリア。おかず、ご飯、スープと頼んでも170円くらい。
2番目はセブシティの汚れた川。
3番目はセブシティの裕福地帯の中心にあるショッピングモール(アヤラ)。
4番目は見たサンゴ礁。モアルボアル、シキホール島、アポ島、スミロン島で見た(アポ、スミロンはガイド強制で高い)。
タップして拡大してください。

※※ただし自分だって疲れてきたら、そこそこちゃんとした店で買い物などしていることも書き添えておく。
また危ないものに何でも寛容というわけではない。人をだましたり傷つけたりする行為とか、体に悪影響しかない物質なんかは、まったくダメ。

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