「ジャニー性加害」が突然大問題になったことの重大さ

Screenshot_20231014-164805 (2).pngついこの間まで「大した問題ではない」と見なされていたことが、突然重大問題だと騒がれだす。
それも知られていなかった問題ではなく、広く知られていて裁判でも有罪判決が出ているような問題がだ。

もちろん、ジャニー喜多川氏の性加害問題のことを言っている。
けれどもあることが、社会に「問題認定」された途端に大騒ぎになるのは珍しいことではない。
「加害」全般がそうなったのが最近のことだ。
性的マイノリティの問題だってそうだろう。
発達障害やHSPだって最近だ。
これらはどれも、それまで誰もが知っていた問題だ。


なぜこんなことが起きるのだろう? その大きな原因が今回は明らかになったと思う。

ジャニー氏の性加害問題は、北公次氏が告発本をベストセラーにした80年代から、多くの人に知られていた。
それが今回大問題となったきっかけは、今年3月にBBCがその特集番組を作ったことだ。


では大問題認定の「瞬間」には何が起きたか?
マスコミがそれまでの「大した問題ではない」という態度を一斉に翻したのだ。
さすがにBBCが取り上げたらもうごまかしようがないと各社が判断した。
この瞬間については、もっと語られるべきだ。


このことを誠実に謝罪した東京新聞と日本テレビの双方は、
「しょせんは芸能界のスキャンダル」
くらいに見なしていたと語っている。
(テレビ局については正確には「事務所の味方をしよう」という態度を「事務所を責めよう」に一変させたと言うべきだ)。


自分はこれまで、
「ずっと見えていたある問題が、なぜ突然重大だと『問題認定』されて、世間が態度を変えてワーワー騒ぎ出すのか」
と考えあぐねてきたけれども、大きな原因がわかった。
日頃から横並びな日本のマスコミが、横並びのだんまり作戦から横並びで態度を一変させるから、このようにあっと驚く大転換が起きるのだ。


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もうひとつ、90年代からずっと言っていることがある。それは、
「なぜ我々の実感とは関係なく、ある種の問題ばかりが大問題扱いされ、別の種の問題は些細な問題扱いされているのか」
ということ。

大問題の地位を欲しいままにしてきたのは、政治、国際、事件、経済といった問題群だ。
そして「大したことない扱いの問題」の代表は、人間関係、心(メンタルヘルス)、個人の悩みといったことだろう。


そしてこうした区別もやはり、横並びのマスコミが行ってきたのだ。


政治などの前者の問題は多くの人に共通する問題なので、そりゃそう扱うだろう、という見方をする人もいるかもしれない。
けれどもこの性加害はどうだ。
「人間関係の問題」のひとつで、前者の問題群のどこにも入らない。
加害・ハラスメント全般もそうだ。
けれどもこれらだって多くの人に共通する。
それらをないがしろにしてきたからこそ、今のような事態になったのだ。



それだけではない。我々の大多数はまさにそれらの「大したことない問題」で、日々七転八倒しているではないか。
つまり後者のほうを日々、「重大な問題」と考えて生きているのではないか。
(もちろん前者が重大ではないと言ってるわけではない。後者もまた重大なのだということだ)


だから自信を持って
「私にとっては、小さいとされている問題だって大きな問題だぞ」
と叫んでいい。
いやもっともっと叫ばなきゃいけない。


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自分の友人にはテレビ・新聞関係者がたくさんいるのでこれを言うと差しさわりがあるかもしれない。
けれども性加害を見過ごしてきた(加害者の側に立っていた)ことが明かされた時なのだから、このくらい言わせてくれよと思う。

マスコミは正義の味方という立場を取っている。
けれどもマスコミの正義だって大したものではなく、その正義はとても古い正義だと感じる。
その古さをもっと正確に言うなら、1970年あたりの正義、つまり全共闘運動あたりの正義(反戦を筆頭とするような)ではないか。
もちろんそれは相変わらず大事な問題だ。ただそこに新しい要素がなかなか付け加わらない。
性加害問題のように。
こんなことを言っていると、今度は自分がマスコミから干されるかもしれないが。


それでもまだまだ、ジャニーズ事務所だけでなく、性加害問題だけでなく、芸能事務所がらみの問題は多いと言いたいけど。
女優の「のん」さんの問題はどうなのだ。


※この記事の趣旨は、「なんで知ってたのに言わなかったんだ」ということではない。
「マスコミが決める問題の大きい小さいなんて大したことない」と言いたい。

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