2007年08月06日

我々は霊長類である

霊長類の分布図.gifミカンを育てていると、自分が霊長類だったことを思い出したりする。
ミカンの実は、花のあとに小さくついて少しずつ大きくなり、ちょうど手のひらサイズになった時に色も緑から黄色に変わって、食べ頃になったことがわかる。
手でもぎ取って皮をむくと、なかの房が各々一口サイズに分かれていて実に食べやすい。まるでヒトが食べるためにできた食品みたいで不思議だ。
大体果物というのは、味つけをせずに生で食べてるのにうまいところからして不思議なんだが。

昔々、我々霊長類は、主に熱帯地方で樹上生活を送っていた。が、数百万年から数千万年前のどこかの時点で、遺伝子に変異が起きて、体内でビタミンC(アスコルビン酸)を合成する最終酵素を欠いてしまった(他の哺乳動物はほとんどすべて、ビタミンCを体内で合成できる)。

霊長類は、本来そこで絶滅するはずだった(そのくらい、ビタミンCは不可欠な栄養素なのだ)。
しかし幸いにも、熱帯林の樹上にはビタミンCを豊富に含む果物があったので、霊長類は生き延びることができたらしい(というより、果物を獲れなかった種はそこで滅びてしまったんだろう。だから哺乳類のなかで、今いる霊長類だけが、色を見分けられるのかもしれない)。

しかし、森林からさまよい出て文明生活を始めたヒトは、かんきつ類をはじめとする果物を栽培しなければならなくなった。
さらに時代を下ると都市化が進み、果物は大量栽培や大量輸送で補われるようになる。
しかし、ビタミンCは「新鮮さ」の指標みたいなもので、収穫して時間がたったり、加工したりすると、すぐに失われてしまう。
都市人口が全人類の半数近くまで激増している今となっては、もう果物だけでは足りなくなったのか、工場で大量のアスコルビン酸を化学合成して、ジュースや飴に混ぜたり、錠剤にして飲んで補っているのだ。

このプロセスのなかの、どこで大幅に間違ったのかは簡単には言えない。
しかし少なくとも今、我々ヒトはなんて面倒なことをする生き物になったのか、と驚くには値する。ビタミンCの補給に、一体どれだけの資源や労力を費やしているのか。
いい加減に、直接ミカンを枝からもぎ取って食べるような方向に少しずつでも戻していかないと、そろそろ生物種としてヤバイのかもしれない。我々の目や手のひらが、そうしていた頃から何も変わっていないことだけは確かなのだ。

図は、世界の霊長類の分布図(京都大学霊長類研究所HPより)
posted by 鶴見済 at 10:39| 自然界 | 更新情報をチェックする