ユダヤ陰謀論が作られる簡単な理由

たまにはちょっと変わったテーマで書こう。本の作業が終わったので、ブログを書く余裕が出てきた。 「少しは合ってるところがやっかいだ」少し前に友人と、ユダヤ陰謀論についてこんなふうに話した。 ユダヤ陰謀論というのは簡単に言えば、ロスチャイルド家、ロックフェラー家といった、ユダヤ系の金融資本(金貸し)が陰で世界を自由自在に操っているというものだ。これについても、いつかは考えを書いておきたかった。 例えば、日露戦争の時、ロスチャイルド家は日本にもロシアにもお金を貸していた。これをもって、「ロスチャイルドは日本とロシアに戦争をさせて……」のように言われる。貸していたのが確かだと確認できたら、「少なくとも日露戦争は支配していた」なんて思ってしまうのではないか。そして、ロスチャイルドやロックフェラーが世界を操っているという説の根拠も、大体こんなものだと思う。 お金を貸せば貸した相手にある程度は影響力を持てるのだから、確かに少しは支配している。けれども彼らの仕事はお金を貸すことなのだ。それをすべて「支配した」「〇〇をやらせた」ととらえるから、世界を操ってきたように見えてしまう。 〇〇産業界に資金を出せば、「〇〇産業を支配」なんて簡単に言ってしまう。✕✕にお金を貸していたことを「✕✕と陰でつながっていた」「結びついていた」なんて見ることもあるだろう。それも同じだ。たしかにつながってはいるけれども、グルになっているというわけではない。 もちろん「もうお金を貸さないぞ」と強く出れば、相手…

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それでも社会は浪費を促す(追記あり)

●これほど節電しよう、エネルギーについて考えようと言っている時に、地デジ移行で薄型テレビの売れ行きが絶好調だと騒がれている(註1)。またエコポイントを導入して、「節電のための省エネ家電の販売促進」(!)まで国は検討している(註2)。ついでに東京でオリンピックをやって、でかい施設を作って日本経済を活気づかせようとも騒いでいる。自分にはこういうことは、「気が狂っている」としか思えない。日本で一番電力を浪費しているのは製造業であり、なかでも「機械」はトップだ(註3)、なんてことを言わなくても、誰だって感覚的にわかる。そういうことでは、我々は幸せにはならないと。原発も建物もダムも、自動車も家電も、もう一杯だからいらないのだ。そんなものより、汚れていない食べ物や空気や水や土のほうが、はるかに大事だ。あとは少なく稼いで、それを公平に分けて、のんびり生きていけばいいのだ。「経済のために原発を」と言っている連中が、こんな目にあってもまだわかっていないのは、「豊かさとは何か」ということだ。(註1)薄型TV、駆け込み需要ピーク 地デジ移行まで1週間 (日経) (註2)今冬に家電エコポイント復活も 玄葉氏、電力不足対策で具体案 (SankeiBiz) 薄型テレビは、去年11月にエコポイントの半減効果で、空前の売り上げを記録したばかり。 (註3)業種別電力消費の内訳(PDF、26p) (経済産業省) 2位鉄鋼、3位化学、4位パルプ紙板紙、5位窯業土石(セメントなど)(06年)。ただし数あるエネルギーのなかから電力…

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電力を浪費しているのは製造業

●「原発がなくても電力は足りている」(註1)、という批判をなかったことにして、「原発がないから電力不足」の猛キャンペーンが始まっている。日本は世界でもアメリカ、中国に次いで電力を使っている国だ(4位ロシア、5位インド)。ドイツやイギリスやフランスの使用電力量など、日本の半分かそれ以下だ。だからもともと、日本は電力を使いすぎなのだ。そして国内でその電力を一番浪費しているのは、家庭のクーラーやオフィスの照明などではなく、「製造業(の工場)」が圧倒的だ。製造業のなかでも、電力を大量に使っているのは金属機械(自動車、家電を含む)、鉄鋼業、化学工業などだ(エネルギー多消費型の業種は他に、セメント、製紙など)(註2)。けれどもこの国に生きていて、鉄筋コンクリートや鉄骨、ビニールやプラスチックが多すぎると思わない人がいるだろうか? そもそも工業製品自体が多すぎる。 電気を使わないのは簡単だ。これら余計なものの生産を減らせばいいのだ。今、電気を浪費している製造業がまったく批判されないのは、驚くべきことだ(註3)。けれども、こうした重厚長大型製造業は日本経済界(というかこの国)の中枢にいるので(経団連会長・米倉は住友化学の会長)、なかなか批判できない。 (註1)原発なくても電力足ります 環境保護団体が試算 (共同)電力が足りていることは、多くの論者・専門機関・マスコミが指摘している。2003年春には東電の原発がすべて止まったが、電力は足りていた。 (註2)日本の製造業エネルギー消費の推移 業種別の電力消費量につ…

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自然を汚せば人体も汚れる

●農水省がまたしても、遺伝子組替え(GM)作物を認可しようとしている。しかも今回は、世界最大のGM企業であり、悪名の高いモンサント社のナタネ、綿花などを認めようとしてるのだ。21日までパブリックコメントを受け付けているので、文句を言おう。GM作物とセットで売られる除草剤は、遺伝子操作をしていないすべての植物を枯らすほど強力なものだ。自分がGMに反対する第一の理由は、その除草剤が環境や人体に悪いからだ。けれども悲しいのは、今進行中の大放射能汚染に比べたら、農薬による汚染は軽いものに感じられることだ。農水省遺伝子組み換えパブリックコメント概要  フォーム 参考日記:グローバル企業は種も独占する ●原発事故のおかげでわかったことのひとつは、自然界のなかの物質の循環のしかたであり、ヒトが自然界にいかに含まれているかだった。福島で大気中に出た物質は、風で東京に運ばれ、雨で川や湖に落ち、水道水に混ざって我々の体に入る。牧草につけば、それを食べた牛の乳に混ざり、それをヒトが飲む。川から海に流れれば、それを魚が食べ、それをヒトが食べる。どのくらいの時間に、どのくらいの範囲を物質が巡っているのか、こんなにハッキリわかったことはなかった。「身土不二」(体と土は別物ではない)という言葉は、地産地消を勧める時によく使われるが、今は「土が汚れれば生物の体も汚れる」という意味で説得力がある。大体の野菜の9割は水なので(ヒトは7割が水)、水が汚染された場所の野菜は当然汚染されている。ヒトも牛も哺乳類なので、牛乳に混じる…

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まずは企業を儲けさせて

「大企業が儲かれば、その儲けが下々に行き渡って、社会全体が豊かになる」という“トリクルダウン(おこぼれ)幻想”に、この社会はいつまでだまされ続けるのか?日本で最も好景気が長く続いたのはいつだったか? それは60年代でも、80年代でもなく、2002年から07年までの69ヶ月間の間だ。「いざなぎ越え景気」とも呼ばれた。この時期に景気がいいと実感した人はほとんどいないだろう。この時期にこそ貧富の格差が拡大し、正社員の数も平均給料も減り続け、実質的に企業には減税、個人には増税が行われたからだ(註1)。好景気だったのだから、上のほうの一部は大々的に儲けた。けれども、おこぼれなんかなかったのだ。 そして性懲りもなくまた国は、企業に減税、個人に増税しようとしている(註2)。企業に国際競争力をつけさせることで、経済成長を促し、雇用を拡大し、給料を増やし、国民を豊かにするためだという。国民を豊かにしたければ、国民のために税金を使えばいいのだ。いつでも「まずは大企業を儲けさせてから」という話になるのは、それだけが目的だからだ。経済界(註3)の言うことは聞く。アメリカの言うことも聞く(註4)。そして国民の言うことは聞かない。これが、この国の政府が戦後やってきたことのすべてだ、と思える(註5)。 (註1)参考:国民が「いざなぎ越え」景気を実感できない理由 (森永卓郎)(註2)参考:法人税率5%引き下げ 個人は計5500億円増税 (朝日)「思い切って(税率を)5%下げて、投資や雇用を拡大することで働く人の給料を増やして…

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経済界の望むがまま

●今メキシコでやっているCOP16では、日本の代表がどの参加国よりも強く京都議定書の延長に反対して非難を浴びている。つまり、「北」も「南」も含めたすべての国のCO2排出を規制できないなら、いっそのこと規制なんかなくせと言ってるわけだ。 これは自動車、鉄鋼、電気、石油など、CO2をもっと出したい日本の産業界団体の要望そのままだ。こんなものが、我々の総意ということでいいのか?そもそも「北」の国々が工業化したせいで地球が温暖化しているのだから、こういう態度は今叫ばれている”クライメート・ジャスティス(気候問題における公正)”に真っ向から刃向かうようなものだ。京都議定書の延長に反対 「公平な枠組みを」 業界9団体が提言(産経) ●三菱重工などの軍需産業が、武器輸出規制を緩和しろと政府に圧力をかけていた。もともとはヨーロッパやNATOに日本と共同で作った武器を売りたいアメリカ(の産業界)の要請だったことが、ウィキリークスのおかげでバレたが、ここでも日米の経済・産業界の儲けの前で道理が引っ込んでいる。武器輸出三原則の見直し 防衛相が意欲、防衛産業は期待(朝日) 他にも企業減税(註1)、エコポイント(註2)、TPP参加、エコカー減税(註3)、原発輸出、地デジ移行……と、どれも経済・産業界の上層部の望むがままの、時代に逆行した政策ばかりが推し進められている。我々は、彼ら(とそれに従う政治家やマスコミ)にもっと怒っていいのだ。彼らが儲けなければ、みんなが生きていけない、なんていうのも向こうのプロパガンダなんだ…

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消費から降りるための9原則

「消費のエスカレーターから降りるための9つの原則」を、ハーバード大学教授のジュリエット・ショアは、著書『浪費するアメリカ人─なぜ要らないものまで欲しがるか』(註1)のなかで提唱している。1.欲望をコントロールする2.新しい消費のシンボルを作り出す──高級品をかっこ悪いものにする3.自分自身をコントロールする──競争消費に対する自発的な抵抗4.共同利用を学ぶ──借り手になったり貸し手になったり5.商業システムを解剖する──賢い消費者になる6.「買い物療法」を避ける──消費は中毒である7.祝い事を脱商業化する8.時間を作る──働きすぎと浪費の悪循環に陥っていないか9.政府介入で消費の歪みを調整する  自分ならここに、「買わずに自分で作る」「消費をあおる連中を止める」「マスメディアに踊らされない」(註2)「商品がどこから来てどこに行くのか想像する」等々を加えたい(「賢い消費者になる」という言い方にも違和感を感じる)。11月27日(土)は、一年に一度、どうしても必要なもの以外は買わずに過ごしてみようというBuy Nothing Dayだ。どうしても必要と思っていたものでも、買わずにいると、そうでもなかったことに気づく。ちなみに自分は、一週間のうち半分以上がバイ・ナッシング・デイだが。 (註1)この本で著者は、消費が減り経済が成長しなくなることは、経済の崩壊につながらないと結論づけている。(註2)マスメディアは、広告欄に限らず、経済・産業界のための宣伝の道具だ。例えばこんなニュースがあった。原発受注、タイ…

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トウモロコシができすぎるアメリカの事情

日本に住む我々が食べるトウモロコシは、90%以上がアメリカからの輸入だ。トウモロコシそのものを食べていなくても、それはスナック菓子や油など様々な加工品になって、我々の口に入っている。 けれども、そのトウモロコシがどんなふうに育てられているのかはわからない。それを教えてくれる映画が『キング・コーン』だ。小農家を潰してできた、はるか彼方まで続く大農園で、化学肥料、遺伝子組み換え種、農薬を使って、トウモロコシは育つ。 アメリカでは70年代からトウモロコシの増産を促したため、国内で生産が過剰になった。日本の市場を完全に制覇し、メキシコの伝統的な農業を崩壊させたアメリカ産トウモロコシが、なぜこれほど世界中に輸出されるのか、という向こうの事情もよくわかる(註)。⇒映画『キング・コーン』公式サイト (大規模な牛の畜産現場もすごい)  (註)現在世界中で輸出されるトウモロコシの70%以上がアメリカ産である。類似傑作映画:『いのちの食べかた』 (最近の肉や野菜が、どんな異常な環境で育っているのかを伝えるドキュメンタリー)写真の映画主人公たちの後ろにあるのは、トウモロコシ粒の山。自分は図書館で借りて観た。

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7イレブンが捨てる食品は毎日約2億円分である

セブンイレブンで1日に捨てられる弁当、おにぎり、パン、惣菜類の合計は、呆れ返ることに“1億8千万円分”にのぼる(註1)。1個500円の弁当にすると、36万個分に当たる(1店舗につき、大体弁当30個分だそうだ)。“1年に”ではなく“1日に”というのにも驚くが、“日本で”でなく“セブンイレブンで”というのにも驚く(註2)。 なぜこんなことになるのかというと、セブンイレブンでは、各加盟店が大量に仕入れて大量に捨ててくれたほうが、本部が儲かる会計方法を取り入れているからだ(ローソンやサークルKサンクスも同じ)。売れ残った食品の負担は、各店に押し付けられるので、当然各店は見切り値下げ販売をして、食品を売り切りたいのだが、本部は儲けが減るのでそれを禁止してきた(註3)。 日本には食べ物の輸入が不可欠だ、などと言って、わざわざ遠くの国から膨大なエネルギーを使って運んできた食べ物を、こんなふうに捨てることで、特定の企業が儲ける。そのすぐ側で、食べるもののない野宿者のための炊き出しがボランティアで行なわれている。経済学の父・アダム・スミスは、個人が勝手に利益を追求していけば、それが社会全体の利益につながると考えた。バカかと言いたい。 (註1)08年現在の数字。 (註2)コンビニからは年間500万トン、日本全体では2000万トンの食べ物が捨てられる。世界の食料援助の総量は年間850万トンにすぎない。 (註3)09年には、セブンイレブン本部の見切り販売の禁止に裁判所から独占禁止法違反の判決が出た。本部はこれを…

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こんなに肉を食べなくてもいい

魚の“あら(粗)”は時々買って食べているが、肉(牛肉、豚肉、鶏肉)はまったく買わなくなった。肉を滅多に食べなくなって思うのは、「それまでと何も変わらない」ということだ(註1)。農林水産省がはじき出した、「国内で日本人の平均的な必要カロリー量を供給した場合のメニュー」を見ると、そっちのほうが普通なのかもしれない、と思えてくる。 国内生産のみで2020kcal供給する場合の一日の食事のメニュー例  一見すると、驚くべき粗食に見える。けれども、カロリーはこれでおおむね足りている。また、右下に書かれているPFCバランス(たんぱく質、脂肪、炭水化物のバランス)を見ると、今の食事とたんぱく質の比率はほとんど変わらず、脂肪は大きく減っていて、今よりもむしろバランスがいいことがわかる。つまり国内で、必要な食べ物を調達することは、一応可能なのだ。 まあ、問題は自給の方向に向けることであって、すぐにこれに移行しなければならないわけではない。ここで注目すべきなのは、今の我々の食生活と大きく隔たっている部分だ。 特に肉は、9日に1回100g程度しか食べられないが(卵や牛乳、油脂の少なさにも驚くが)、もともと今が肉を食べすぎなのだ。 牛肉1kgを作るには、エサとして穀物が7~11kg、豚肉1kgには穀物4~7kg、鶏肉1kgには穀物3~4kgが必要になってしまう。こうしたエサ用穀物の増大が、生産量としては足りている食糧が、世界の全員に行き渡らない大きな原因になっている。たんぱく質は自分の体のなかで合成できるのだか…

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「借金」は植民地支配の道具である

05年にボブ・ゲルドフ(註1)は、イギリスで開かれるG8に対して、アフリカ(註2)の債務帳消しを要求する“ライヴ8(エイト)”というコンサートを、G8主催国の8カ国で同時に開いた(註3)。この上なく豪華な出演者たちのライヴが、インターネットで世界同時生中継されるのを驚きながら見た。けれどもこれは、彼が85年に開催した“ライヴ・エイド”(註4)のようなチャリティー・コンサートではなかった。このイベントで集めたのは、カネではなく署名だったのだ。なぜなら、ライヴ・エイドで集めた募金280億円は、当時アフリカが返済している借金のほんの1週間分でしかなかったからだ(註5)。どれだけアフリカにカネを渡しても、それは借金の返済として、あっという間に「北」の国々に戻ってしまう。アフリカの借金を無くさなければ貧困は解決しないという、構造の問題に一歩迫ったのだ。今や世界的に、カネは「北」から「南」に流れているのでない。その逆だ。「南」は資源や換金作物の輸出でせっかく稼いだカネを、巨額の利子とともに「北」に返しているのだ(註6)。そして世界でも最も“貧しく”、借金の多い国に一番カネを貸しているのは日本だ。 ではなぜアフリカをはじめ、「南」の国々は、借金漬けになったのか? 第二次大戦後、アジアやアフリカでは多くの植民地が政治的に独立した。国は企業や個人と違って、破産できないことになっている。そこで、「北」の国々、「北」の民間銀行、IMF・世界銀行などの国際機関が、返せるかどうかも二の次にカネを貸しまくった。60年代には…

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バブル崩壊はなぜ起きるのか?

金融だの投資だのマネーゲームだののことなど本来なら考えたくもないが、どうやらこれをなんとかしないと、我々の生きやすい社会もまたないことになってるらしい。 例えば97年にタイに始まり、マレーシア、インドネシア、フィリピン、韓国などの国々の通貨が次々に暴落して、経済を破綻させる「アジア通貨危機」という大事件があった。そのきっかけを作ったのが、ジョージ・ソロスという世界一有名な投機家のファンドをはじめとするヘッジファンド(註1)だった。これらのヘッジファンドは、97年の5月にタイ通貨・バーツに一斉に“売り”を浴びせ、暴落したところで買い戻して利ざやを荒稼ぎする“空売り”(註2)を仕掛けたのだ。その結果タイ、インドネシア、韓国では財政が破綻してIMFからカネを借り入れるハメになった。タイの首相とインドネシアの大統領は失脚し、マレーシアの首相は名指しでジョージ・ソロスを非難した。この通貨危機は98年以降ロシアから、ブラジル、トルコ、アルゼンチンにまで及んだ。 ただし投機家の力だけでは、こんな大きな事態を引き起こせるものではない。彼らはその引き金を引いただけだ。これらの東南アジア諸国は、この頃バブルの状態にあった。それは金融の自由化政策によって海外から投資マネー(註3)が流入した(つまり海外からカネを借りまくった)ことがら始まった。マネーが流れ込んでいると、貿易が赤字でも見かけ上は、経済が順調に行っているように見える。そして投資家(投機家)がもうそろそろバブルがはじけると見込んだ時、このマネーを一…

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小沢健二『うさぎ!』から見る宮下公園問題(追記あり)

「貧しい」国々では、水道や、電気や、ガスや、保険や、学校や、植物の種や、安全の基準や、刑務所や、鉄道などの、みんなでつくった、みんなのものが、どんどん灰色に「プライヴェタイゼーション」されていました。(略) プライヴェタイゼーションは、国によって、「私有化」とか、「民営化」とか、「社会化」とか、呼ばれていました。(略) しかし起こることは、どの国でも同じでした。一言で言うと、それは、「人のことを人が決める」やり方から、「人のことを灰色が決める」やり方になることでした。(略) 政府を中心とした「民主主義」は、下から、人びとが怒って、やることを変えられる仕組みでした。灰色は、そんな仕組みは、気に入らないのでした。                   ──小沢健二『うさぎ!』 第二話(註1)より 宮下公園ナイキ化は、もちろん民営化(=私有化)の一種だ(註2)。こうして、なんでもかんでも企業や経済の(つまりカネ儲けの)原理に従わせて、「公共」の部分を小さくするのがいいと進められたのが、日本では小泉・竹中の構造改革だった。 その結果、例えば社会福祉やセーフティーネットがなくなり、今は世界中でその見直しの時期に入っているのに、まだまだ「官から民へ(公から私へ)」や「官民連携」がいいと信じて疑わない人たちがいる、ということなんだろう。 渋谷では28日(日)に、年間3万人の自殺者を出すこんな社会にも、宮下ナイキ化にも反対する「葬式パレード」が行なわれた(註3)。これらのことは、一見関係ないように見える…

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経済学はいかにデタラメであるか

「たいていのパパラギが、その職業ですることのほかは、何もできない。頭は知恵にあふれ、腕は力に満ちている最高の酋長が、自分の寝むしろを横木にかけることもできなかったり、自分の食器が洗えなかったりする。」 「一日に一回、いやもっと何回でも、小川へ水を汲みに行くのは楽しいことだ。しかし日の出から夜まで、毎日毎時汲み続けねばならないとしたら(…)、最後には自分のからだの手かせ足かせにむほんを起こし、彼は怒りのなかで爆発するだろう。まったく、同じくり返しの仕事ほど、人間にとってつらいことはないのだから」 ──サモアの酋長・ツイアビ(註1) 「どんな(劣った)国でも比較的に生産性の高い産業に特化して、それを輸出し、他のものをそのカネで輸入すれば豊かになる」。これが経済学で最も重要な命題のひとつとも言われる「比較優位(比較生産費)説」(註2)だ。この19世紀の前半にイギリスの投資家が考えた説が、今でも自由貿易を世界が推し進める論拠になっている。 ではそのとおりに、例えばコーヒーの生産に特化した「南」の国々は豊かになっているか? なっているわけがない。 理論がどうだか知らないが、現実にはコーヒー豆の相場は大きく変わるし(基本的には常に安く買い叩かれている)、輸入する食料の値段も高騰する。コーヒー豆で思うように稼げなかった年には、その国の農民は食料が買えずに餓死してしまったり、農地を後にして都市に出てスラムに住むしかなくなってしまっている。これはコーヒーだけでなく、カカオ、綿花、ゴム、ココナッツ…と…

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日本人が豊かになれない理由

我々日本に住む者が“豊か”であるとされる根拠は、GDP(国内総生産)が世界で2位だということだ(註1)。豊かさを測るほとんど唯一絶対の基準がこのGDPであり、経済成長とは、単にこの値が増えることでしかない。GDPとは「ある年に国内で生産されたモノやサービスの付加価値(儲け)を足したもの」だ。経済学でも当たり前に、「GDPが大きくなる=いいこと」と見なされてきた。では奇跡の経済成長を遂げたはずの我々は、なぜこれほど“豊かさ”からほど遠いのか?  GDPは簡単に言えば、我々がカネを使うほど大きくなる。ありもので弁当を作っていくよりも、500円のランチを食べたほうが、500円のランチよりも1000円のランチのほうが、GDPは増える。引越しをする時に友人に手伝ってもらっても、仮にその友人に謝礼金を払ったとしても、そのやり取りは市場を介していないので、GDPには加算されない。ただしこれを引越し業者に頼めば、GDPは増える。すべての家事は、カネに換算できないのでGDPには含まれないが、子どもを自分で育てずに保育園に預ければ、老人を家庭から施設に移せば、GDPは増える。皆が水道水を飲むのをやめてボトル入りの水を買うようにすれば、GDPは増える。公園で遊ぶのをやめて、遊園地に行けばGDPは増える。自分で服を繕わず、捨てて新しく買えば、CDの友人との貸し借りをやめて、一人一人が買えば、自転車はやめてタクシーに乗れば、野菜は作らずに買えば、カネがなければ借金をして買えば……、いずれもGDPは増えるのだ。 つまりこ…

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日本の農業がほぼ終わっている

我々は自分の国の農業のことを、いつの間にか忘れていないか?今や、日本で主に農業による収入で生活している人の平均年齢は、64.2歳にもなる。普通の企業なら、もう定年退職している年齢なのだ。06年に農業を継いだ人は、医者になった人6300人よりも少ない、5000人未満だった。このままでは、10年後には日本の農業は終わってしまうと警告されている(註1)。 なぜこんなことになるのかというと、もちろん輸入農作物が入りすぎているからだ。それで食べていけないのなら、当然就業する人もいなくなる。 例えば大豆なら、関税を撤廃した70年頃から、自給率は大体5%くらいまで下がっている。今の最大の敵は、アメリカのモンサント社が作った遺伝子組み換え(GM)大豆だ。 モンサント社は、有毒化学物質PCBと枯葉剤を作った化学会社として知られるが、今では強力な除草剤とそれに耐性のあるGM作物を作って、セットで世界中に売りまくっていることで悪名が高い(註2)。 こういうやり方と政府からの巨額の補助金で安くなった大豆が、日本が自動車などの輸出を有利にしたいがためやっている果てしない関税引き下げと相まって、流れ込んできている(註3)。「遺伝組み換えでない」大豆による味噌、醤油、豆腐、納豆を選んでいても、植物油、マーガリン、マヨネーズ等々の「油」として、モンサントのGM大豆は我々の口にも入っているはずだ(註4)。 デトロイトでは、自動車工場が海外に移転して人がいなくなった跡地を無断で耕してしまう、“ゲットー・ガ-デン”が…

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誰にでもわかる資本主義の定義

資本主義とは何か? 平凡社の『世界大百科事典』には、次のようにわかりやすく書いてある。「資本主義とは利潤の獲得を第一の目的とした経済活動のことをいう。」「貨幣が元手として投下され、もうけ(利潤)とともに回収されたとき、貨幣は利潤を生み出す資本として用いられたことになる。」「資本主義経済においては、生産活動も生産の必要そのもののためになされるのではなく、利潤の獲得のためになされる。」「利潤の獲得はさまざまの機会をねらって行われる。ある品物を安く買ってきて別のところで高く売ることによって、また、なにか品物を作ってそれにもうけをつけて売ることによって、さらには貨幣を人に貸しつけて利息をとることによっても、利潤は獲得される。」 つまり、例えば資本家がシャンプーを売る時、「10人いるから3本くらいあれば足りるだろう」ということは問題ではない。問題は「1本につき10円のもうけがあるから、3本なら30円のもうけだが、ひとりに1本ずつ売れば100円のもうけ、ひとりに2本ずつ売れば200円のもうけになる。なんとか2本ずつ売れないものか?」といったことなのだ(註1)。 それはシャンプーという品物でなくても、服でも自動車でも缶ジュースでも、何でもいいし、また製造業でなくてもいい。「こっちで買ってあっちで売れば一個につき10円のもうけになるから、10個売って100円のもうけにしたい」といった商業でも(註2)、「5%の利率で100円貸せば5円のもうけになるから、10人に1000円ずつ貸して500円もうけたい」といった金…

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我々はアジアにゴミを輸出している

廃品回収車が無料で引き取った製品の多くが、アジア諸国へ輸出されると見られているとは知らなかった(註1)。日本ではペットボトルも、500ミリリットルの容器(約30グラム)にして年間200億本分(!)も作られているが、廃ペットボトルの半分近くが中国へと輸出されているのも知らなかった(註2)。我々が新商品を見たり作ったりするのと同じ熱心さで、ゴミのことも見ていれば、大量生産・大量消費を肯定するなんてことにはならないはずなのだ。 例えば、中国の香港に近い沿海部に貴嶼(グイユ)という町がある。ここは世界最大の電子電気ゴミ(E‐waste)の処分場になっていて、手作業でテレビやパソコンや携帯電話が分解され、カネ目の金属や部品が取り出されて、残骸は野焼き・野積みされることも多い。環境と健康への害は深刻で、検査を受けたここの子どもの8割以上が鉛中毒になっていた。 さらに日本ではほとんど知られていないが、日本はフィリピンなどの東南アジア諸国とEPA(経済協力協定)を結んで、有害ゴミの輸出関税を削減・撤廃しようとして、各地で猛烈な反対運動を巻き起こしている(註3)。つまり、アジア諸国から資源や製品を輸入し、ゴミを送り返すというとんでもないことをやっているのだ、この国は(日本とアジア諸国の関係は、世界の「北」と「南」の関係に置きかえてもいいかもしれない)。 それなのに地デジ移行で最大6400万台のテレビが捨てられることを(註4)、国も経済界も奨励しているのだ。文句を言わないほうがどうかしている。もちろんリサイ…

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2%の人々が世界の富の半分を独占している

国連大学の調査で以下のことがわかった(註1)。●世界の家計資産の半分以上は、最も裕福なわずか2%の人々が独占している。 ●同じく、1%の人々が40%の資産を独占している(2000年)。●貧しい半分の人々が所有する資産は、世界の家計資産の1%にすぎない。 ●高所得国でも純資産がマイナス(負債)で、世界の最貧困層にランクされている人が数多くいる。 日本が世界で見たら裕福な国であるとは言っても、厚生労働省の調査では、日本の貧困率は15.7%、つまり6~7人に一人が貧困という、98年以降最悪の数字だった。こんな貧困率の高さはOECD加盟国のなかでは、メキシコ、トルコ、アメリカに次いで第4位なのだ(註2)。 普通に異常事態だと思う。こういう状況をそのままにしておいて、この世界で起きている「カネがない」とか「仕事が大変だ」といった問題をどうにかしようとしても、結局どうにもならないんじゃないか?「無意味でも、これをやらないと皆が食っていけない」なんて言いながら、無駄な新製品やダムを作ってさらなるカネを稼ごうとするより、今ある富をより公平に分配するほうが先じゃないのか?そして半分以上の富を独占されている98%の我々が、この一人が平等に一票を持っている民主主義の世界で、なぜこんな状況に甘んじているのかも知りたいところだ(富裕層による何らかのギミックが使われてるはずだ)(註3)。 (註1)最も裕福な2%が世界の富の半分を所有(国連大学、2006年)http://www.unu.edu/HQ/japane…

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電通のPR戦略を分析する

「買うことだ。どんなものでも」――アイゼンハワー元米大統領(1950年代後半の大恐慌以来の不況時に、景気回復のため国民は何をするべきか、と聞かれて) 60年代に電通PRセンター社長が著書で公にした、以下の「わが社の戦略十訓」(註1)が我々を戦慄させるのは、まるでアイゼンハワーの景気対策のように、それが今も変わらずこの社会に生きているからだ。 ただし念のために言うと、これはひとつの企業やPRの世界だけが使っている戦略ではない。売るという行為があれば、どこにでも潜んでいる手口なのだ。 1.もっと使用させろ 2.捨てさせ忘れさせろ 3.むだ使いさせろ 4.季節を忘れさせろ(註2) 5.贈り物をさせろ(註3) 6.コンビナートで使わせろ 7.キッカケを投じろ 8.流行遅れにさせろ 9.気安く買わせろ 10.混乱をつくりだせ これらの元になったとされる、アメリカの社会学者V・パッカードがまとめた「浪費をつくり出す戦略」(註4)もあわせて読むと、よりわかりやすい。こちらは50年代のアメリカで使われた販売戦略をまとめたもので、ここではその7つの枠組みに自分なりの解説や今風の事例も含めた(註5)。 1.もっと買わせる戦略 共有から、一部屋にひとつ、一人にひとつ、さらには一人に複数へ(註6)。例:男性用・女性用別の整髪剤、朝にもシャンプー。2.捨てさせる戦略 使い捨て化して、使うたびに買わせる。例:紙製の食器、使い捨て容器、使い捨て傘、使い捨てカメラ、使い捨てコンタクトレンズ、使い捨てカートリッジ……。3…

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