80年代のネクラ嘲笑文化、陰口文化
80年代に大人気だったビートたけしのオールナイトニッポンは、メインがきよしや軍団をはじめ身近な人間の嘲笑や陰口だった。大島渚や村田英雄など、有名人をしつこくバカにすることも多かった。それに大なり小なり影響されて、教室でも口調まで真似して、他人の観察と嘲笑に明け暮れていた。誰があの時変なことを言った、誰は笑っちゃうなどとたけし気取りでしきりに言っている本人自身も、それによってますます危険になるのだから、実にご苦労なことだった。こういうのは、高校にも大学にも、そして職場にもいた。
たけしほどではないものの、80年代に人気のあったタモリのオールナイトニッポンでも、ネクラ嘲笑を芸としていて、極めてよくなかった。よしとされたのはネアカな性格である。考えとか思いやりとか、そんなことよりも、とりあえず人当たりが明るいか暗いかで、その人の集団内での評価が決まってしまった。ネクラ嘲笑/ネアカ賛美は、もともとタモリが言い出したなんてことは気づかれないほど、広く社会全般に広まった。今は「陰キャ」という言葉がある。それもあまりよくないと思うのだが、クラスなどの集団のなかのポジションを指す言葉なので(「俺は中学では陰キャだった」など)、嘲笑の言葉である「ネクラ」とはちょっと違うように思う。
滅多に振り返られることもないが、こういうものは、個人の生きやすい/生きづらいを決定的に左右する。ああいう放送は今は無理だと思うので、いい時代になったものだと思う。
「バブルの時代はよかった」「80年代は幸福だった」。一面的…